『アレクサンドロス大王と東西文明の交流展』@東京国立博物館

金曜は8時まで開館してるから会社終わった後に『アレクサンドロス大王と東西文明の交流展』に行ってみた.夜の博物館もいいものね.思ったより人はいたけど、こんな時間に来るくらいだから冷やかし半分の人はほぼ皆無、静かな雰囲気の中でゆったり見ることが出来た.

展示品も良くて行った甲斐があったわ.今回一番のお目当ては日本の仏像たち.最後の展示室に入った途端、執金剛像、毘沙門天、大黒天がいっぺんに目に入ってきて思わず立ち止まってしまった.大黒天が来てるなんて知らなかったから余計にびっくり.しかもあの大黒天って観世音寺のじゃん!最後の展示室は、ギリシア文化がどのような変遷をたどってはるか日本にまで影響を与えたかにスポットとあてた興味深いテーマで大満足.ヘルメスが大黒様だったりヘラクレスが金剛像だったり、へーっと思うよね.

□ 眠るヘルマフロディテ
すーっごい色っぽくてきれいでどうしようかと思った.後ろからだとどう見ても女性なのに前に回るとちゃーんとついてるものがついてるっていうびっくり箱のような大理石像.幸せそうに横たわって寝ている姿が無垢な赤ちゃんみたいなのに、シーツに絡まる足元がエロティックでどきどきしちゃった.ギリシア時代の彫刻ってミロのビーナスしかり、ニケしかり、色っぽいというよりはがっしりと威厳を感じさせるものが多いのに、この細身の像は世紀末の象徴派のあたりの絵を思い出させるような、ある意味少女漫画チックな美しさだった.これだけは絵葉書を買おうって売店行ってのけぞった.あんなにも実物の魅力を伝えない絵葉書をどうやったら作れるんだ!ひどすぎる.
□ 執金剛神立像
快慶の作品.1メートルもないくらいの思ったよりずっと小さい像だった.遠くから眺めてると三月堂の執金剛像を思い出した.作品解説を見たら、やはりモデルはあそこの執金剛像だったらしい.ポーズはもちろん腰の細さが似ている.
□ 兜跋毘沙門天立像
こりゃすごい.東寺の兜跋毘沙門天の忠実な写しというこの像、とにかく有無を言わせぬかっこよさ.東寺だとここまで明るい照明の下で見られないから細部がわかってうれしい.細い体に衣と兜で縦長ラインが強調されているところに手に持つ仏具で更に縦に伸びてる印象が強まりスタイル抜群の仏像だ.衣のパズルのような模様が全部彫りこまれているのもすごい.細みのコートのような衣の上に肩から甲冑をかぶせ、腰のところのベルトでボトムとつながっているのがよくわかる.これの上にこれを着てここでこう止まってて、というように衣のつながりが非常にわかりやすいのも特徴的.蛇腹模様の篭手やブーツもモダンな印象を与える.一般に風を受けてたなびく衣を着けている四天王が多いなか、この「線」を意識したような衣はとてもおもしろい.顔はなぜかロボットアニメ風.
□ 大黒天立像
お久しぶりの大黒様.隣の毘沙門天も11世紀の作品ならこちらも同じ11世紀の作品.なのにこうも違うのかって驚くほどまったく傾向の異なる作品だ.表面の仕上げ方や丸みを帯びたラインのデフォルメ具合などを見ていると現代彫刻かと思ってしまう.

他に印象に残ったのは細かい細工が素晴らしい装身具類.イヤリングやらネックレスやらデザインが今見てもまったく遜色が無い.古代の装身具というと金や宝石など材料は豪華でもどこかに細工の稚拙さが残ってたりするものだけど、今回の展示品にはまったくそういうところがなかった.前4〜3世紀の作品だというが、いったいどうしたらあんな細工ができたんだろう.

8時閉館までじっくり見て良い気分で博物館を後にした.