こまつ座『太鼓たたいて笛吹いて』

作:井上ひさし
演出:栗山民也
大竹しのぶ 梅沢昌代 神野三鈴 
松本きょうじ 阿南健治 木場勝己 朴勝哲

林扶美子の半生を描いたもの.すみません、日本の近現代文学にはさっぱり興味がなく、当然のごとく林扶美子の作品は読んだことありません.かろうじて名前だけは知っていた程度の知識では、彼女の社会的評価などわかるはずもなく、後でちらっと観劇評を検索して一概にこの作品における女史の評価を真に受けてはいけないんだということを知った.でもとにかく情熱的な女性だったことには間違いがなさそう.そしてこういう女性を演じさせると大竹しのぶは神がかったように凄い.元活動家で慈善事業に力を入れている女性役の神野三鈴や、お調子者でよく言えば生活力に満ち溢れたプロデューサー役の木場勝己、お国言葉で愛嬌たっぷりの阿南健治などほかの役者陣も充実した隙のないな舞台だった.
戦争物は苦手で(辛いことから出来るだけ目をそらしていたい意気地なしなので…)最初は適当に流し見してたのに、話が進むにつれて思わず画面に見入ってる自分がいた.戦争当初は戦意高揚のための演説や慰問などを積極的に行った林扶美子が、何がきっかけで戦争反対を主張するようになったかを語るシーンは息を呑んだ.戦争中は「非国民!」と罵ってたのに戦後はそんなこともなかったかのように友人関係を続けるあたりがいかにも日本人っぽいと思いつつ、そういうしたたかな力強さが頼もしくもあった.