Dan Brown 『The Da Vinch Code』

The Da Vinci Code: (Robert Langdon Book 2)

The Da Vinci Code: (Robert Langdon Book 2)

*ネタバレしてるので未読の方は要注意
ようやく読み終わりました.タイトルからしてもっとペダンティックなものかと思いきや、意外にもハリウッド王道的なストレートなサスペンス物でした.
ヒーローとヒロインが危機一髪のところで危険を回避しながら進行するハラハラドキドキのストーリーで自然にページをめくらせる力のある作品だと思う.が、ラスト近くRemyの正体がばれて殺されたあたりで興味が薄れ始め……というか殺しすぎだから.この終盤までストーリーの核の一人として登場してきた人物が殺されたと思ったから、あ、そう、そうなの?っていきなり冷めた.でも実はここのレトリックに騙されてたんだけどさ.悔しいな.
改めて言うまでもなく、これはキリスト教が身近にある人達と知識でしか知らない私みたいな人ではかなり読後感が違うんじゃないか?パリやオランダでもベストセラー1位にこれがずらーっと並んでいたけれど、確かにキリスト教世界でこの本が話題になるのはわかる.主にレオナルドに注目が当たっている日本と違い、どちらかといえばキリスト教、特にカトリックの正史に対する異論をエンターテイメントという手法の中で提示していることのほうが話題の中心になってるんじゃないかしら.死海文書が話題になったのは知ってる.知ってるけれど内容は忘れてしまった.Magdalenaがキリストの妻でありキリストの子を身ごもったというのはキリスト教世界では普通に知られてる説なんだろうか.私は知らなかったのでそのあたりの記述はとても楽しく読んだ.ただ信仰には程遠い生活を送っているせいか、異端であるとか正統であるとかそこんとこの葛藤を実感として掴むことは出来ない.Sophieが覗き見た儀式がそんなに大変なことなんだろうか.一切の関係を絶つほどの衝撃を与えるものなんだろうか.一般のカトリック信者にとってはSophieの行動は普通に理解できることなんだろうか.
美術に関しては、まがりなりにもiconologyの専門家であるLangdonが鏡文字を見てすぐにピンとこなかったところがどうにも納得できない.私ですら見た瞬間にわかったものを、LangdonだけでなくTeabingもいたのに2人とも気づかないなんてありえない.なんて間抜けな学者なんだ.
ルーブルに始まりルーブルに終わったこの物語を読んでいる時に、そのルーブルに行けたのは偶然とはいえ嬉しかった.
Langdon達が隠れたトイレはあそこかー、なんて物語を思い出しながらグランドギャラリーを歩きました.