河竹黙阿弥『三人吉三廓初買』 岩波文庫

おもしろい.全編読むことでようやく物語の全体像が把握できた.百両と刀が織り成す因縁が絡みに絡んでいかにも江戸末期の歌舞伎らしい退廃的な雰囲気が漂う作品だ.
今の歌舞伎じゃ三人の吉三のとこしか上演されないから、並列に語られる文里と一重の側の物語りを始めてちゃんと知った.歌舞伎では和尚、お坊、お嬢の三人が有名だけれども、戯曲を読む限りではこの3人が突出して描かれてるわけでもない.特にお嬢は他の2人に比べほとんど書き込みがなくて物足りないくらいだった.黙阿弥の特徴でもある七五調のセリフは文字で読んでも心地よい.
歌舞伎の戯曲がもっと出版されればいいのになあ.読みたいのは一杯ある.