宮部みゆき『日暮らし』上・下

日暮らし 上

日暮らし 上

注:ネタばれあり>妹

『ぼんくら』の続きです.まんまと母親に買ってもらい私が先に読みました.
葵、おふじ、お六、春香先生をはじめ多種多様な女性たちがそれぞれの生を生きてます.そして人の生き死になんてものは偶然の産物なんだなあということをまじまじと感じさせられました.
並みの作家なら葵の死をそれまでの因縁の終着点にもっていき、それに佐吉をからめて人情話としてオチをつけそうなものなのに、それをしないところがさすがです.ミステリー小説のお約束として当然犯人は被害者と関係があり何らかの恨みを抱いている人だと想像しがちなので、葵殺しが突発的なまるで事故のようなものだとされたことによって読者を簡単にカタルシスに浸らせてくれない.考えようによってはとても意地悪な決着だけれども、世の中というのは得てしてこういうものなのかもしれない.
偶然が重なり殺された葵にも殺した方にもそれぞれ背後に絡み合った事情があり、それが連鎖しているのが社会というものなんだ.くもの糸のように細い糸がどこかで誰かとつながってつながって、そうやって出来た社会の一面を覗かせてくれる作家です.
弓之助はこの先楽しみな子供です.ぜひ弓之助成長物語もよろしくお願いしたい.