寿初春大歌舞伎 昼の部 松竹座

一、源平布引滝 義賢最期

義賢:愛之助/行綱:段治郎/葵御前:笑三郎/待宵姫:春猿/進野次郎:薪車/矢走兵内:猿弥/小万:孝太郎


おもしろーい!
本来の目的そっちのけで一番楽しんだのがこの演目でした.
愛之助が素晴らしい.関西中心の役者なので東京だと、特に歌舞伎座だとこんなに大きな役の愛之助を見ることが出来ない.これを見ただけでも行った甲斐があったというものです.私よりも更に愛之助を見たことの無い妹は、登場の瞬間あまりの仁左さんそっくりぶりに「似すぎじゃない?」って呟くほど驚いていた.

義賢が孤軍奮闘してるシーンの面白さときたら!!
近くのおばさんが、後ろから近づいてくる敵に声を上げて驚いてたけど、その気持ちわかる、わかるよー.
「あ、敵が!」「あ、後ろ!後ろ!」って、歌舞伎の様式だというのにハラハラドキドキの緊張感に溢れてたもん.
冂の形に組まれた襖の上に義賢が立ち上がったところがクライマックス.支えがない冂の上に立つだけでもびっくりなのに、その後はバランス取りながらその冂を斜めに崩して地面に着地です.タイミング外すと怖いよね〜.
ラスト、仏倒れも圧巻.あれを毎日やって怪我しないってのは相当な訓練が必要だと思われます.
義賢の奮迅に圧倒されて、最後は大興奮の客席でした.


この演目は仁左さんが孝夫時代に復活させたというものなのに、仁左さんの演じる義賢は見たことがない.この手の懐の大きい武将役は仁左さんにはぴったりだと思うので是非見てみたいけど、もうやらないよねえ.こんな演目1ヶ月もやったら寿命が縮まっちゃうよ.
確か一番最後にやった時ですらファンの方が身体の心配してたのを覚えてる.でも愛之助が初役だというのにこの素晴らしさだったので、是非持ち役として今後も演じ続けて欲しい.歌舞伎座でやってくれたら一番嬉しいのに、なかなか難しいんだろうねえ.


二、十六夜清心

清心:仁左衛門十六夜玉三郎/求女:孝太郎/お藤:笑三郎/船頭三次:薪車/西心:寿猿/杢助:猿弥/白蓮:弥十郎


歌舞伎座でもこの二人の通しを見ているのでこれで2度目です.筋を知っているのでお決まりの文句を楽しむ姿勢で、ほぅーへぇーって楽しめるわけですが、他の歌舞伎の作品と同じくこれもまた相当破天荒なお話です.二人とも最初と最後じゃ人格変わりすぎ.
仁左さん、玉さんの揃い踏みは晴れやかな気分になっていいね〜
「しかし、まてよ」の有名な台詞のある堤のシーンは見所がいっぱい.仁左さんは「水も滴るいい男」の形容がぴったりの美しさだし、死のうとしても水泳得意なためにどうしても浮き上がっちゃったり、思い切れずにうだうだしてるところなんてなんとも可愛らしい.
玉さんの仇っぽい役は不思議に面白い.お姫様や花魁といった優雅で高貴なイメージが強い人だけに散切り頭でドスきかせてるってだけで、わーって新鮮な驚きが会場を包むのが面白い.
ポンポンと息がぴったりの台詞の応酬に思わず会場から笑いが漏れていた.