最澄の天台の国宝


金曜日は20時まで開館しているのをいいことに東博を心行くまで満喫してきました.
出品目録を眺めた時点ではどうかなーって思ってたのに、いざ行ってみたら見所が多すぎて大変なくらい盛りだくさんの…来会でした.


冒頭はたくさんの国宝の書が展示してあったものの、お経をはじめとして書の良し悪しどころか見所すらわからない.筆の美しさだけでなく、書だけあって内容の歴史的意義も重要なんだろうけれど、いかんせん読めないからわかりません.
天台宗金剛界胎蔵界に加え完成された悟りを意味する蘇悉地を加えた3つの世界があるんだそうだ.蘇悉地って初めて聞いた.
今回初めて「出展予定だったのに盗難にあいました」という作品に出会った.島根の鰐淵寺から盗まれたという「一字金輪曼荼羅図」がそれ.去年の8月29日〜9月2日の間に盗まれちゃったんだって.破損することなく無事に出てくるといいんだけど.


おみやげにストラップを買ってきた.全然最澄天台宗とは関係なし.

国宝 遺告 慈恵大師筆

きっちりとした楷書が並ぶ中、慈恵大師の自筆だという遺言の書は生活の匂いを感じさせるものだった.

重文 僧形坐像 伝慈覚大師 平安時代1047年 岩手・黒石寺

もとは地蔵菩薩だったのかもという説明文があったけど、そりゃねーだろっていうくらい不思議な顔立ちの坐像.横に広がる大きな鼻、盛り上がった分厚い唇などエキゾチックな顔立ちは東南アジアの仏像を髣髴とさせる.地蔵菩薩でこの顔ってありなのか?ってその説には疑問を感じるけど、黒石寺のものとなるとあながちナシとはいえないかもと思えるあたりが恐ろしい.

重文 法華経宝塔曼荼羅図 平安時代12世紀 奈良・談山神社

紺地に金で描いた2幅.宝塔がお経の文字で描かれていて、そのあまりの細かさから信仰の篤さを感じた.細かい作業好きとしてこういうのを見ると自分でやってみたくなる.

国宝 普賢菩薩像 平安時代12世紀 東京国立博物館

たまに本館国宝室でも公開されてる絵.いつ見ても綺麗でうっとりします.ちょうど象と目があう位置にかけてあったので、コンニチハとばかりにしばらく見詰め合ってきました.

国宝 六道絵 15幅 鎌倉時代13世紀 滋賀・聖衆来迎寺

今回一番見たかったもの.これが16日までの展示なので慌てて今日行ったみたいなものだもん.

  • 閻魔王
  • 等活地獄
    • 殺生を犯した人がいく地獄.何を持ってマシとするかどうかはわからないけど、とりあえず一番マシな地獄らしい.
  • 黒縄地獄
    • 等活地獄の10倍の責め苦が味わえるそうです.殺生や偸盗.木材みたいに黒縄で体に線を引いてその線のままに切り刻まれる.石を抱いて鉄の縄を渡らされて、落っこちると焼かれちゃう.外でもいろんな拷問が行われてます.
  • 衆合地獄
    • 黒縄の10倍.子供を誘拐して強姦した人など.お尻の穴に焼けた鉄を流し込まれてました.ギャーッ
  • 阿鼻地獄
    • 最下層の地獄.無間地獄ともいう.父母や僧を殺生、仏の教えを誹謗したり.
  • 餓鬼道(貪欲な行為・嫉妬深さ)
  • 畜生道(動物に生まれ変わって酷使される様子)
  • 阿修羅道(阿修羅vs帝釈天の戦い.阿修羅はいつも負ける運命)
  • 人道不浄相
    • 屍体の9変化.美しい女性の死体が骨に変わるまでの変化を写実的に描いた作品.不浄観を体得するための絵なんだとか.
  • 人道書相
  • 人道無常相
  • 天道無常相
  • 譬喩(ひゆ)経所説念仏功徳
  • 優婆塞戒(うばそくかい)経所説念仏功徳

重文 薬師如来坐像 平安正歴4年(993) 滋賀・善水寺

50年に一度しか開帳されない貴重な仏像です.量感はあるのに唇の金箔が上手い具合にはげて黒い艶が出ているのがどことなく女性的な印象を与える如来像でした.

重文 大日如来坐像 平安時代寿永2年(1183) 岐阜・横蔵寺


若々しい青年のような大日如来像.ハンサムです.彩色がはげて黄色っぽくなっているのが残念.
横蔵寺は美濃の正倉院と呼ばれてるそうです.谷汲にあるあのお寺だよね.自分の過去の記録たどってみたら「円成寺のにそっくり」と書いてた.

重文 聖観音菩薩立像 平安12世紀 滋賀・延暦寺

横川中堂の本尊で、本展覧会のチラシにも使われてる仏像です.右にちょっと傾いた姿勢や花弁に右手をそえて咲かせようとしている仕草がたおやかでなんとも優しげな親しみやすい観音様です.

重文 宝冠阿弥陀如来坐像(快慶作) 鎌倉時代建仁元年(1201) 広島・構三寺

宝冠を被った阿弥陀様というのは天台独特のものだそうだ.宝冠といってもこの仏像を見る限りは菩薩像のように髪を結い上げたものに見えた.

重文 阿弥陀三尊像 平安9世紀 大阪・四天王寺

不思議な姿の三尊像.阿弥陀様はお椀をかぶせたような肉髷が目立っていた.が、最も目を惹くのは両脇侍の踊るようなポーズ.勢至菩薩が左足を、観音菩薩が右足をそれぞれ後ろに跳ね上げていて、かつ勢至菩薩は合掌、観音菩薩は両手をお腹の辺りでそろえたバレエのような姿勢をとっていた.この珍しいポーズから供養菩薩の可能性があるのだとか.

重文 梵天立像.帝釈天立像 運慶・快慶作 鎌倉時代 正治3年(1201) 愛知・瀧山寺

源頼朝を供養するために建てられたというこのお寺の仏像は、こってりと後補の彩色が厚塗りされているので木彫の造形がよくわからなくなってしまってた.
このお寺の三尊像は真ん中に聖観音、両脇侍が梵天帝釈天という変則的なものだそうだ.

魚藍観音立像 平安9世紀 滋賀・鶏足寺

説明に“胸部が大きく膨らむ”とあったけど、いや、これどうみても女性の胸だから.

重文 普賢延命菩薩坐像 平安10〜11世紀 大分・大山寺

二重の台座の上段に4体、下段に8体いる象が可愛らしい.3センチ以上はあるかと思われる大きな水晶の白毫が特徴的.

重文 四天王立像 持国天増長天 平安9世紀 岩手・黒石寺

すごいパースだなあ.特に増長天.頭が物凄く小さくて肩がはっているのに胴体が異常に細い.それでいて下半身はどっしりしていてアンバランスこの上ない.この不思議なアンバランス感がまた魅力的.

重文 薬師如来坐像 平安9世紀 京都・雙林寺

最澄が自刻した薬師如来を模したものを天台薬師と呼ぶらしい.これもその一体.手足が分厚く身体に比べて大きいことが目を惹いた.