文豪・夏目漱石-そのこころとまなざし展

江戸東京博物館


江戸東京博物館にて開催中の漱石展に行ってきた.まさかそれほど人もいないだろうとなめてかかってたら、意外なほどの人出に驚いた.おかげで1章、2章に並んでいる学生時代のノートや教師時代の原稿などは長蛇の列であまり見ることができなかった.比較的じっくりゆっくり見る人が多いのも混雑する要因.それでも小説の原稿や書簡などは比較的しっかり見ることができた.
漱石は作品と同じくらい書簡や日記も面白い.漱石って本人にそのつもりがあったかどうかは定かではないけれど、結構ユーモラスでお茶目な男性だと思う.じゃないとあんなに慕われないでしょう.プンスカ怒りながらクスッて笑っちゃうような皮肉書いてたりするしね.漱石の日記や論文や書簡は本当に面白いのでお勧めです.青空文庫*1に一杯あるから携帯でも簡単に読めちゃうよ!
学生時代のノートって、あの時代だからか全部英語なのね.とにかく日本語が一切ない.文学も哲学も数学もすべて英語.私のかすかな記憶では当時の帝大って講義自体も全部英語じゃなかったか?違ったかな?あれだけ英語ばっかり使ってたらそりゃ英語で物書くのも億劫じゃなくなるはずだ.ラテン語の活用法をまとめたものもあって懐かしくてじっくり見ちゃった.英語は達筆すぎて読めなかったけどラテン語は活用のみだからわかりやすい字で大丈夫だった.教師時代にはHamletの講義のための覚書(やっぱり英語)、英語のテスト問題なんかもあった.当時の英語の問題ってどんなのかなーって見てみたら、日本語訳問題のテキストとか結構哲学的な良い文章が並んでて普通に感心して読んじゃった.英作文の生徒の解答用紙の添削で、赤字で「this is the worst」って書いてあるの.そんな答案用紙帰ってきたらさすがに落ち込むと思う…
ロンドン時代は集めた本とそれのレジメみたいなのが並んで置いてあった.ナショナルギャラリーの図録が当たり前だけど白黒なのね.これを見るとカラー写真登場の意義を感じないわけにはいかなかった.本の横に日本語で「ソンナモンジャナイヨ」って書いてあって、何の話題かなーってそこだけ読んだらBuddhismに関する記述だった.
原稿の日本字は今で言うと女の子が書くみたいな丸っこい可愛らしい字だった.雑誌から気に入った広告や付録のカードを丁寧に切り取って収集している様子とか見てもやっぱり可愛らしいおじ様に見える.それがどれもこれも今で言うアンティックカードのような可愛い絵柄のものであることもそう思う一因.そういうのを好むのはロンドン生活の影響かもしれない、っていうかその可能性のほうが高いのかもしれないけどね.
最後に漱石デスマスクの展示があった.写真で見るより鼻が立派.日本人にしては高くて大きい鼻なので全体に彫が深い印象だった.普通にハンサムだと思う.でも若手門下生の一員として展示してあった学生帽をかぶった芥川の写真には負けた.ほんと美形だわ.
ちょこっとメモってきたもの.

(父になって欲しいと頼む小宮重隆への返事の書簡)…僕は是でも青年だぜ.中々若いしだからおとつあんには向かない

(文学博士を授与するという文部省に対し)今日迄ただの夏目なにがしとして世を渡つて參りましたし、是から先も矢張りただの夏目なにがしで暮したい希望を持っております

ars longa, viva brevis 【術は永く人生は短い】 ― 『こころ』の表見返し裏


あまりにグッズが可愛かったのでこんなに買い込んでしまった.『吾輩は猫である』初版本(確か)の装丁に使われた猫ちゃんの\絵がモチーフのTシャツとトートバッグ.絵葉書も同じく『吾輩は猫である』全3巻のそれぞれの表紙になった猫ちゃん.クリアファイルは漱石の写真というより漱石山房の原稿用紙もどきが欲しくて.もったいないのと一体何をこれに記せばいいのか途方にくれそうで結局使えなそうではある代物だ.
でも実は『吾輩は猫である』未読だったりする.『坊ちゃん』も読む気になれなくてつい最近読んだ.何度も読み返すのは『虞美人草』と『彼岸過迄』.そういえばあっちゃんはオーソドックスに『こころ』を推してた.私自身は『こころ』よりは『門』とか『明暗』のほうが手に取る気になる.
おもしろグッズとしては誰でもすぐに漱石になれるってことでワンタッチ髭が売っていて、売り場のお兄ちゃんが実際に付けてた.売ってるところを見なければ普通に自前の髭だと思いくらい自然な出来.さすが4000円以上してるだけあるわ.でもあれ売れるのかな?