ドリアン・グレイの肖像@世田谷パブリックシアター

作:オスカー・ワイルド 構成・演出:鈴木勝秀
山本耕史 須藤温子 伊達暁 米村亮太朗 三上市朗 加納幸和

1階G列15番
スズカツさん演出だったか…
どうもスズカツ演出とは相性が悪いらしい.上演後のトークショーにてワイルド作品への思い入れを語られていたので、満を持しての上演だということなんだろうけれど私が思い描くワイルド世界とは違っていた.
ドリアンの倒錯した耽美な世界というのはあの時代の退廃的な煌びやかな表舞台があってこその影だと思うので、影ばかりで作られた世界だと退廃さが薄れてしまっているように感じた.夜の闇しか無い世界に思えて、彼らが普段生活している日常の断片を見出すことが難しかった.
全体的に淡々としててもちょいドラマティックなものを予想してた私にはちょっと物足りなかった.なんというか哲学的解釈?生真面目な演出だった.
2時間という短い時間に凝縮されていたのである程度の改編はしかたがないことだと思う.ただ1つ、シビルの弟をドリアンが直接殺していたことが納得できかねた.原作で、ドリアンが"Don't shoot it"ってウサギを助けようとしたその時に撃たれてしまうというタイミングが象徴的だと感じただけに、あそこでドリアンが自分で手を下してしまったらその後の展開にすんなり流れていかないような気がしてしまった.
山本君のドリアンは、阿片窟で横になって震えている場面が良かった.まったくもって無垢で小さな子供みたいで、これなら周囲の人がことごとく騙されるわっていう説得力があった.冒頭のアトリエシーンから既にちょっと斜に構えている風に見えたのは最初びっくりした.あそこはもっと無邪気で頭カラッポなバカ青年だと思ってたので意外だった.
実際の絵を使わず額縁だけというのは確かに想像力がかき立てられてた.あと加納ヘンリーの最後の冷笑がヘンリーらしくて良かった.