橋本治『日本の女帝の物語』
日本の女帝の物語―あまりにも現代的な古代の六人の女帝達 (集英社新書 506B)
- 作者: 橋本治
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/08/18
- メディア: 新書
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日本には6人の女帝がいます.みな古代世界の天皇です.橋本治によれば6人の女帝はこんな感じらしいです.
推古天皇「いいわ、やるわよ」
皇極天皇「私なんかがやってもいいのかしら」
斉明天皇(皇極天皇が重祚)「私は分かってなかったのよ.今度こそちゃんとやり直すわ」
持統天皇「私がやらなかったら誰がやるっていうの?」
元明天皇「いやよ、いやよ.私にそんなこと出来ないわ」
元正天皇「お母様がおっしゃるのならやるわ」
孝謙天皇“仕事に生きる”ということを当然とし何の疑いもためらいも持たず進んで皇太子となり天皇であることを受け入れた
それぞれの女帝にそれぞれの背景と社会情勢があり、その中で女性としてどう天皇であったのかがとても面白く読むことができます.ちょっと前に女性天皇がありかなしかが話題になったとき、古来女帝は「中継ぎの天皇」としてのみ存在したという議論になったらしいですが、中継ぎの天皇とは何か、そしてこれら女帝達は本当に中継ぎの天皇でだけあったのかを橋本流に解説してくれてます.
学校の勉強でもこうやって大化の改新や壬申の乱をそこに登場する人間の性質も含めて説明してくれたらもっとこの時代が楽しくなると思う.
あとがきで橋本さんがいこう書いてます.
事実と言うのはバラバラになったガラス玉で、それに糸を通さないと「バラバラになる以前のネックレス」は復元できません.この本が少し変わっている本であるのなら、私のその「事実」に対す津糸の通し方が少しばかり独特であるというだけですが、でも、糸を通さないと、バラバラなものはバラバラなだけなのです.
橋本さんは糸の通し方が本当に上手い.結果から類推される原因の分析が抜群に上手い.小説家でもあるだけあって、人の心の動きを掴みそれを文章にするのが長けているので、読み物として大変面白い作品になってます.