女殺油地獄

仁左さん一世一代の芝居.見たい見たいと思いつつ結局見に行かれなかった芝居なので放送がありがたい.
もちろん前にも見たことはあれど、改めてすごい話だなあと気圧された.言ってみれば恩人でもあるお吉をお金貸してくれないからって惨殺した主人公が、花道で拍手喝さいを浴び見栄をきって引っ込んでいくって演劇ならではというか歌舞伎ならではというか、カッコよさって何だろうって改めて考えさせられる芝居だった.
その前の殺し場の緊迫感と残酷さが圧倒的で、そんじょそこらのホラーより怖いってくらいだから余計に幕切れの盛り上がりに違和感が.歌舞伎には救いのない哀しい話は多々あれど、主人公に多かれ少なかれ共感することでカタルシスを感じるができるものなのだけれど、この話ではそれが難しい.両親の深い愛情に触れて改心したかと思った直後にカッとして殺しちゃうっていう流れがあまりにリアルでとにかく怖い.
仁左さんは素敵でした.