ダンテ『神曲 地獄編』
- 作者: ダンテ,平川祐弘
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/11/20
- メディア: 文庫
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ダンテの神曲は西洋美術や西洋文学には欠かせないものだけど実際に読んだことがなかった.私の中のイメージはひたすらボッティチェリの描いた挿絵しかなくて一体全体どんな地獄世界が広がってるかとドキドキしながら読んでみた.
おそらくかなり工夫を凝らした日本語訳がなされているせいもあるんだろうけれど、予想外に読みやすくてサクサクとページが進んだ.簡単に言えばウェルギリウスを水先案内人としてダンテが地獄めぐりをするというお話.様々な罪を犯した罪人が想像力を駆使したと思われる残酷な罰を与えられている描写が続く.今でこそそれこそ映画のCGなんかでもっと残酷な場面を実際に見ることがあるわけだけど、キリスト教が全てだった当時の人々にはこの言葉で綴られた世界が遥かに身近で恐ろしかったことだろう.
意外だったのは地獄で罰を受けている人たちがダンテに身の上話や恨みつらみを饒舌なまでに吐露してること.その心情の描き方にダンテの好き嫌いがかなりはっきり現れてるのがボケーっと読んでてもわかる.
現代人でありかつキリスト教徒でもない私からすれば、そういうダンテの揺るぎない信仰への自信があからさま過ぎてこんなところでも一神教の怖さを感じてしまった.キリスト教徒でないということだけでギリシャの偉人なんかも地獄にいるんだもん.地獄では最上級の良いお館に居るとはいえ「罪はないのに破滅した」とかさ、正直キリスト教徒じゃない身からすればそんな身勝手なとしか言いようがない.マホメットなんて身体を股からあご下まで真っ二つにされちゃって.そもそもキリスト教徒でない者にとってはキリスト教の地獄より自分の宗教でしょ.異教徒であることは地獄に落ちるという物凄い恐怖心を植えつけているわけだけど、じゃ仏教とかはどう言ってるのかなって気になった.
平行して河合隼雄・中沢新一『仏教が好き!』を読み返してたとこなんで、仏教・イスラム教というアジア的宗教とキリスト教という比較がこういう面ではどうなってるんだろうって知りたくなった.
次は煉獄編か聖書あたりを読んでみようと思う.