福永武彦『風のかたみ』

風のかたみ (新潮文庫 ふ 4-10)

風のかたみ (新潮文庫 ふ 4-10)

今昔物語風な登場人物が織り成す平安貴族風な優雅な恋の物語とでもいいましょうか.報われない想いを抱えた若者達だけなら愛の儚さで終わったところが、立身出世や身の保身を考える法師や親といった大人たちが彼らの周りを囲んでしまっていたことでまさに風のような世の無常を感じる物語になってました.
そうはいっても恋物語としても十分楽しめます.この時代を舞台背景にもってくると社会を構成するレイヤーの違いというものがそのまま性格描写や思考の相違に表すことが出来るのがいいですね.