Studio Life 『トーマの心臓』@アートスフィア

原作:萩尾望都  脚本・演出:倉田淳
オスカー:笠原浩夫 ユリスモール:山崎康一 エーリク:及川健 レドヴィ:石飛幸治 サイフリート:NIRO アンテ:深山洋貴 ヘルベルト:川角一郎 リーベ:小野健太郎 アル:萬代慶太 アーダム:舟見和利 イグー:小林浩司 バッカス:船戸慎士 シャール/シェリー:岩崎大 クローネ/エリザ:前田倫良 カイザー:有島一騎 ヘニング:牧島進一 ミューラー:藤原啓児 ヴェルンハルト・ヴェルナー:河内喜一郎 アデール・ヴェルナー:林勇

あまりに同じタイプの演出が繰り返されるので飽きてしまい何度か落ちた.これまで演出がいいとか悪いとか良くわからなかったけど、今回初めてまずい演出というのはこういうことかって身をもって知った.役者の質を問題にする前に演出をどうにかすべきだと思う.舞台空間の使い方がおかしい、テンポがおかしい、などとボンクラな私が気づくくらいなんだから.とにかく暗転多すぎ、盆回しすぎ、室内セットがすべて下手にあるので同じ動線が続いたりと単調な動きに眠くなる.もったいない.テレビで見た時はアップも多いこともあって舞台全体の使い方とか気にならなかったからテレビ向けにはいいのかも.次はなんと樹さんの『OZ』だって!『月の子』もかなり無謀な挑戦で実際ほんとに無謀だったわけだが、これはさらに上をいっている.『OZ』のほうが熱狂的ファンはいると思うぞー.大丈夫か.樹さんのあのクールなアンドロイドをどうやってやるんだろうか.あ、それから男性が女性をやることには異論はないんだけど、もう少し身長に気を使って欲しいなあ.なぜ誰よりも大きい人を女性に配するんだろうか.


【追記】
2度目のStudio Life.かつてNHKで放送されたの『トーマの心臓』は笠原オスカーが良かったものの曽世ユーリにどうしても馴染めなかったので、今回別な人のユーリに挑戦してみた.実際劇場で見てみると、うーん、テレビで見た方が良かった.そもそも長い.3時間の長さをもたせるにはそれなりの技量が必要.ケラさん、松尾さん、蜷川さんとそれぞれ3時間を飽きることなく見せてくれる演出家だったけど、トーマだと途中飽きて飽きて何度も寝そうになった.多分ご贔屓の役者さんがいれば別な角度で楽しめるのだろうけど、芝居を見るという点ではかなり辛かった.

比較的大きなステージだというのに室内セットを下手の盆の上に全部のせちゃってるから、ちっちゃな盆がクルクルクルクルひっきりなしに回ってた.そして盆が回るたびに暗転.極端に言えば、3分中央で芝居して暗転、盆を回して3分下手で芝居して暗転、再び盆を回して1分芝居で暗転って感じ.原作に忠実とうポリシーは買うけど、映画じゃないんだからそうそう原作通りに人が移動しなくてもいいんじゃなかろうか.映像だとパッと場が切り替わるところを舞台だと実際に人が移動しなくちゃいけないからさあ、同じ動きの連続になるんだよねえ.だからテレビで見た時のほうがおもしろく感じたのかな.

それからやっぱり役者のレベルの差が激しい.メインはまだ見られるんだけど5人の寮生のシーンとかバッカスの部屋(?)のシーンとか、見てるこっちが恥ずかしくて頬が赤くなる.そもそもドイツのギムナジウムが舞台とういことで日本の男性がやるには辛かろう.映画のトーマのように女の子ででもやらない限り、例えジャニーズの若手がやったとしても同じようにこっぱずかしい物になりそうだもん.そういう点では健闘してるといえなくもない.ただやっぱり5人組とかわざと甘えた声を出したりコントですかと突っ込みたくなるような大げさな演技ではなく、もっと自然に、もっとふつーにやってほしい.あれは辛い.

メインの人達もいいんだけど、その前に見た西牟田さんやサダヲちゃんや古田さんや、そういうそうそうたる役者と比べちゃうとイマイチだったなあ.いや、比べるほうが悪いんだけどさあ、実のところもう少しいけるんじゃないかって期待してたの.笠原さんとかね、煙草吸うシーンとか決まってて見惚れちゃったりしてたんだけど、満足かって言われるとねえ.Studio Life以外の芝居で見てみたい.アンテの深山さんは良かった.テレビで見たアンテのあまりにヘタクソさに度肝を抜かれただけに、今回のアンテには安心できた.山崎さんのユーリは、うーん、よくわからん.舞台役者なだけに猫背はいただけません.しゃきっと立って欲しい.

サイフリートのNIROさん、すっごいかっこよかった.顔は好みじゃないけどモデル&ダンサーだけあって立ち姿がきれい.手足が長くて顔が小さくて、出てくるだけで目が奪われた.髪型も素敵.そうそう、なんで『トーマ』だとエーリクやオスカーはチリチリパーマをあてちゃうんだろう.絶対パンフの写真のままのほうがいいのに.あの髪型でかなり素に戻される.もったいない.

2回見て、この劇団はプロの芝居を見るというよりは子供の発表会を見る親の視点で行くべきだとういうことを学んだ.ご贔屓さんにとっては成長過程を見守るという楽しみ方ができるけど、部外者には我慢大会的な側面もあり.ただ微笑ましく見ることもできるから「もう二度とゴメン」とは思わない.でも次の『OZ』は行かないだろうなあ.