『エレファント・バニッシュ』@世田谷パブリックシアター

原作:村上春樹 演出:サイモン・マクバーニー
吹越満 高泉淳子 堺雅人 宮本裕子 高田恵篤 立石凉子 望月康代

【日記より】世田谷パブリックシアターにて『エレファント・バニッシュ』観劇.サイモン・マクバーニーという注目のイギリス人演出家が村上春樹の短編を日本人の役者のみで演出したという話題の作品だ.


映像や照明の効果や体の動きによって最低限のセットの中でいろんな場面を表現する方法は、私が普段見ている小劇場系の演出ではあまり見られないものだ.時間軸を目に見える層として表したり、3次元の入れ代わりなどおもしろいなって思ったけど、果たしてこれが最新かと言われると同意できない.単にこういうのは日本じゃ今は流行らないからやってないだけじゃないかしら.映像とのコラボレイトとかある種の身体表現とかって逆に古臭く感じたのも確か.ただすべて説明してくれる親切な芝居ではなく観客の想像力を喚起する芝居ではあった.常に横から照明が当たっていて全編通してくらーいのが気になった.最後の最後に目も開けていられないほどの照明が正面からぴかーって当たってたけど、こういうの今はやってるの?この間のBUCK-TICKライブのあの目の痛い照明と同じだった.


役者のカラーで見せる芝居ではなく役者も舞台演出の駒の一つといった演出で、せっかく吹越満高泉淳子宮本裕子といった役者を使っているんだからもう少し役者自身にスポットが当たっても良かったんじゃないかと思ってしまった.堺雅人もサーカスのような軽業をこなしてて鍛えてるなあって感心したけど、別にそれ堺雅人じゃなくてもいいし.吹越満はこの間のの『ニンゲン御破産』よりずっと良かった.


村上春樹は『ノルウェーの森』一作読んで女性の描き方にギョッとして以来興味のない作家だ.おかげで今回の話自体もよくわからなかった.象がなんだってんだ.



役者の個性で見せるというよりは、役者も舞台の一部となっているといったスタイリッシュな印象の芝居だった.よく鍛えてるなあって感心するけど、これはこの人じゃなきゃっていう必然性を感じる演出ではなかった.それでも吹越満は独特の雰囲気をかもし出していて、前に見た『ニンゲン御破産』よりずっと良かった.


わたしの観劇傾向はかなり偏りがあるため一概には言えないが、最先端で活躍している日本の演出家とは明らかに傾向が違った.多分今これをやろうと思う日本の演出家はいないんじゃないかなあ.この無機質な雰囲気は一歩間違えるとバブリーな印象を与え、かえって時代遅れに見えてしまうかも.点在するモニターやスクリーンに映し出される映像がイメージ喚起にうまく利用されていたとは思うけど、コンテンポラリーアート展あたりでよく見かける風景っぽくて斬新さはなかった.


全編通じて照明が暗く、おかげで途中落ちかけた.が、最後は眩しいばかりの照明攻撃を受けて前を見ていられないほどだった.BUCK-TICKのライブでも同じようなものがあったし最近この手の照明が流行ってるのか?