カメレオンズ・リップ@シアターコクーン 

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
堤真一 深津絵里 生瀬勝久 犬山イヌコ 山崎一 余貴美子 木村悟 林田麻里

みっちり3時間、なっがー.ケラさんといい、いのうえさんといい、もう…

深津絵里が出るというだけで取ったチケット、深津ちゃんだけじゃなく他の出演者も粒揃い、ケラの本もいつもよりまとまっててかなり良かった.ケラ作にしては話が多方面に広がらず最初から最後までわかりやすい筋道が敷かれたストーリーだった.登場人物が少なかったのもいい.ま、そうはいってもここのところの寝不足がたたったのか、たまーに重い頭が更に重く眠りの国へと誘われ大切な箇所が見逃してしまった感もあり.


嘘が嘘を呼び嘘と真実が交錯しあう複雑な設定だから、当然最後までわからない部分が残ってしまったけど、ラストの深津ちゃんと堤さんを見てたらもうどうでもよくなったわ.


人が理不尽に殺されていくかなり毒を含んだお話で、1幕目のドタバタコメディーがあっただけに2幕の怒涛の展開にちょっとばかし呆然としてしまった.ドナがなぜあれほど嘘つきになってしまったのか、最後のルーファスとの会話でそのヒントとなる重要なことを喋っていたはずなのに、あのシーンにいろんな情報が詰め込まれすぎていて頭が理解する前に先に進んでいってしまった.ちっ.


結局母親のお茶に毒を盛ったのはルーファスってこと?


で、父親を殺したのはドナじゃなくて母親がドナにその罪をなすりつけたってことでいいの?


単純に理解するとそうなるんだけど、なにせケラさんだからなあ、どっかで騙されているような気がしてならん.


裏をかいて実はドナが本当に父親を殺してたとか…ありえなくもないんだもん.


でもそんな2人の雨の中のキスシーンは切なくなるほど綺麗だった.心が壊れてしまったドナをルーファスはどうしようもないほど愛してるのね.でもよーく考えると5歳のときに既にドナのために1人でひっそり母親を殺す計画を実行してるんだよね.ドナがああなってしまった原因の一端を担ってるのかも.それすら計画的だとすれば……などなど、うわー、いろんな想像が出来るなあ.


深津ちゃんは透明感溢れる声がいい.ドナとエレンデイラの二役(ほんとは一役←かなりネタばれ)をなんとも魅力的に演じてた.「言葉が心に響いてこないの」と絶叫するドナの痛々しさがたまらない.あんなお姉さんが身近にいたらそりゃルーファスだって虜になるでしょ.


なにげにこの芝居って声の良いキャストが揃ってるのよね.イヌコさんの声がいいかどうかはおいといて、個性的なのには変わりなし.生瀬さんの生声は素晴らしい.低くて艶があってなーんて色気を含んでるんでしょ.声だけで食ってけるよ.堤さんも落ち着いたいい声.


アテルイの時はあんなにかっこいい田村麻呂をやっているというのに目の前で見てもさっぱりドキドキしなかったから、堤さんのフェロモンは私には届かないんだなあって思ってたのに、今回のナチュラルなおとぼけ堤さんはすげーかっこよかった.あれなら私もドキドキしちゃうよ.


キャスト全員笑いのセンスがあるのでまったく不安になることなく芝居を見ていられた.イヌコさんは切れる役やらせたら怖いほど上手い.生瀬さんと堤さんの掛け合い漫才のようなやり取りも笑えた.決めるところと抜くところがきっちり演じわけできる人が揃ってたからか3時間だれることがなかったな.ま、途中うとうとした私が言っても説得力ないか…


本日の目撃:小田島雄志