『スカパン』@東京グローブ座

【原作】モリエール
【演出】串田和美
串田和美 屋良朝幸 町田慎吾 馬淵英里何 市川実和子 岡本健一 他

微妙でしたなー.演出次第ではもう少し面白くなりそうなストーリーだけにもったいないというか.やたらと暗転するなと思ったら、今度はずーっと同じシーンが続いたりとバランスが悪かったように思う.途中だれて眠くなってしまった.モリエールの作品は笑いの中に当時の貴族社会に対する皮肉や批判が巧妙に隠してあるのが持ち味だと思う.ただそういう視点が今の時代にマッチするかどうかが難しい.スカパンというと思い浮かぶのはイタリアのコメディア・デラルテで(大学のモリエール集中講義での細々とした知識しかないですが…)、そういう路線でいくとひたすら明るいバカ騒ぎというイメージなのだが、今回の演出はどこか暗い影のようなものを常に漂わせていて本来笑えるシーンのはずが痛々しくて笑えないことが多かった.この話の軸は当然スカパンで、いたずら好きで機転が利くが故に皆に頼りにされるスカパンが主人にいじめられ痛めつけられ、それでもめげずに仕返ししたものの見事にばれてまたひどい目にあって、そんなふんだりけったりな役回りなスカパンを、見てる方が笑い飛ばせるような芝居になっていて欲しかった.串田さんのスカパンは可哀想になってきちゃったんだもの.狙ったかどうかはわからないが、からっとした陽気さが感じられない道化というのは笑いというより悲哀のほうが強く感じられてしまうものだ.モリエールと同時代のコスチュームで、吉本のようなお約束ギャグで、どんでん返しの面白味に特化して上演してもらったほうが楽しく見れたように思う.典型的なモリエール喜劇を希望してたから現代風の味付けなしで見たかった.
モリエール物ということ以外で一番のお目当ては岡本健一君.今回はスカパンの相棒のシルヴェストル(?)役で、大男の振りをするところ以外いまいち見せ場がなかった.最初にスカパンと一緒に出てきたときは、召使という立場もなんのその、主人に一杯食わせるために嬉々として悪巧みを考えるスカパンと、主人にばれて怒られることを本気で怖がっているシルヴェストルという、同じ身分でも対極にいる人物として対比されるのかと期待したのに、いまいち中途半端な役回りでしかなくもったいなかった.何より一緒にいったayaちゃんの感想のとおり、かたわのみすぼらしい役だというのに
「だって明らかにかっこいいんだもの」
ええ、まさにその通り.どんなにヘタレを装ってもかっこよさが隠し切れてません.タイタスの時の悪役ではその美貌がこれみよがしに活かされてただけに、適材適所という言葉が身にしみる.綺麗な人が汚い道化をやるのは本当に難しい.
帰りのJRのホームで全然知らないジャニーズファンらしき人が「スカパンおもしろかった!○○君が手を振ってくれた」とかいきなり話し掛けてきて3人で目が点.っていうかその○○君がどの子だかわかってない3人に話を振られても困ります.ただ観劇中の受けを見ているとそういう視点で見にきている人が多そうだったことも確か.ジャニーズの若手に対する反応が甘い甘い.グローブ座でやる限りこの子達の出番を増やさないといけないという演出上の制約があるんじゃないかとうがった見方をしてしまった.