第43回『決戦!油小路』

三谷さんはことあるごとに「ただ死んでいくだけにはしたくない」と言っていて、まさにその通りに死んでいく人には必ずその前に見せ所を作っている.で、今回はそろそろその対象が近藤になってきたのかなあって感じる回だった.
本来闇討ちにした死体を餌におびき出しての惨殺というどうにもフォローしがたい出来事を鍬次郎たちの暴走ということに落ち着けましたか.どうもそこんところは無理やり感が否めず、近藤暗殺計画⇒斎藤脱出⇒伊東近藤会談⇒伊東暗殺⇒油小路と1話に詰め込むことで煙に巻かれた気がしないでもない.三谷さんの作戦勝ちか.


多分世の大半は「平助〜(泣)」って泣いてるんだろうが、私はなんだか油小路のところはぼーっと見守ってしまったな.実はそれよりも伊東の最後のほうが呆然としてしまった.ネタバレ避けてたから三谷さんがどういう経緯で伊東を殺すのか知らなかった.だからあの伊東が「近藤先生のお心を無駄にするな」と一喝するなんて思いもしなかった.平助に関しては試衛館のメンバーが逃がそうとするけど戦って死んじゃうんだろうなーって想像ついたからね.衝撃度としては伊東のほうが高かった.


その前の近藤と伊東の緊迫した会話の中で、知識もあり弁も立ちそんな自分を100%信じていた伊東が近藤の言葉を受けて始めて自分を疑い自分を振り返る.あの時伊東が短剣を差し出した気持ちは嘘ではないと思うし、これまで本心では見下していた近藤という男を始めて理解できたのだと思う.史実の伊東はどうなのかはわからない.でもこの大河の伊東は「ここで死んではいけない人」だと心から思ったところで刺されてしまった.刺されて驚く表情をみるとまさか自分が刺されるとは思ってもみなかったんだろう.あそこで背を向けて歩き始めてしまうところに過信が残っていたということか.谷原さん、いい芝居してたね.最初と最後では本当に顔つきが違っていた.憑き物が落ちたような清々しい顔をしていただけにあそこで死んではいかんですよ.
香取君の近藤も良かったから二人の会話シーンには見入ってしまった.香取君の言葉もようやくちゃんと近藤の口から出てる言葉に聞こえてきた.本気で言ってるんだなあって感じるから多少理論的に変でも知らず知らずに説得されちゃうんだな.そうか、こういうことなのか.多摩から延々周囲が近藤を持ち上げてた気持ちがちょっとだけわかってきたよ.


勘太郎ちゃんは力が入ると歌舞伎癖が出るなあ.表情がキッと変わったところは良かったけど、段々とさすがにそりゃ顔を作りすぎだろうって冷静に突っ込んでしまった.隈取してるような顔してたもんね.なんかいつもの平助とあそこで戦ってる平助がリンクしないんだもん.別人に変わるくらいに自分を捨てないと永倉に刀を上げることができなかったってことなのかな.対峙する永倉が比較的無表情でその対比が良い演出効果になってた.立ち回りの着物や刀の捌き方はさすがサマになっててかっこよかったね
つーか、普通こういう場面でここまで冷静に見てる自分もさすがにどうかと思う.
えー、甘いと言われようが私は近藤局長の、というか香取君の演技で泣きそうになりました.近藤、全然役に立ってないのにね…….段取りもうちょいつけとけよ!ってどつきたくなるのにね…….最後に局長が来てくれてよかったねえって平助に言いたくなった.


沖田君つーか藤原くん、ますますいいです.お考はやんちゃな様子がおみつさんを思い出させて沖田の隣にいてくれてありがとうって素直に思えた.沖田と平助は過保護扱いされてるけど、同じ年少組の斎藤はかなり過酷な仕事をまかせられて大変じゃないですか.
山本太郎君の芝居も好きです.原田の不気味さがよーく出てる.いっちょやってやろうぜってのも本気だけど哀しい時も本気.普通は矛盾する心情が原田の中では成り立っているのがおもしろい.
土方はますます優しい表情になってきてる.やってることは同じなのに明らかに30話の頃と比べると顔の力が抜けている.最近近藤さんがしっかりしてきたから表舞台に出ることが少なくて少し寂しい.でも近藤はやることなすことまっすぐすぎて、結局破綻をきたすんだよなあ.それでもなんだか最近近藤がちゃんと上に立つ器の人に見えてきてるから不思議.伊東が貫禄負けしてたもん.