阿佐ヶ谷スパイダース『悪魔の唄』@本多劇場

【作・演出】長塚圭史
【出演】
山本壱朗…吉田綱太郎
山本愛子…伊勢志摩
牧田サヤ…小島聖
牧田眞……長塚圭史
朝倉紀行…池田鉄洋

鏡石二等兵伊達暁
平山上等兵山内圭哉
立花伍長……中山祐一郎

感想はのちほど.
充実した2時間半でした


が!!
銃だけはやめてほしいんです…
芝居とはいえ本気で怖いんです…


【追記】
『はたらくおとこ』ほどのインパクトはなかったけれど、いつもの阿佐スパよりは少しマイルドな味付けで始めて見る人にも薦めやすい作品だと思った.

日本兵のゾンビ達(中山祐一郎、山内圭哉、伊逹暁)、死んだ恋人(中山ゾンビ)を思うが故に夫(長塚圭史)に殺されその夫とともに地縛霊となった女(小島聖)、夫の不倫が原因で狂ってしまった妻(伊勢志摩)と張本人の夫(吉田綱太郎)、そしてその妻の弟(池田鉄洋

それぞれが物語の主役になってもいいような特異な設定の登場人物達を上手く絡ませてるあたりは秀逸でした.
こういう設定だと奇をてらったこけおどし的な見せ方をしてもおかしくないのに、人が生きるとは、そして生きることへの責任感とは何かといったようなメッセージをきっちり込めてくるあたり、長塚さんは真面目な人なんだろうなと何故かこちらの身が引き締まりました.先日TRに出ていた時も真面目に語っている姿が好印象でした.

ただ、それぞれの人生が濃すぎたせいか、書きたりない部分もあった.長塚夫がああもあっさり決着をつけちゃうことや、池鉄弟の役割分担の薄さが特に気になった.設定を聞いた限りではてっきり弟は姉を女性として愛してるんだと思ったのに、登場した弟にはその片鱗すら見つけられなかった.単純に姉思いの弟ってことだったのかしら.

役者はみな素晴らしかったです.好きな人ばっかり.
シェイクスピアギリシャ悲劇以外の吉田さんを始めて見た.
一番の驚きは池鉄さんが普通の役だったのこと(途中で入れ替わってましたけど).


この芝居のタイトルを『悪魔の唄』としたことが凄い.芝居を見る前はありきたりなイメージしかなかった.でもこの芝居を見た後にこのタイトルを見ると改めて戯曲の意味を考え直してみたくなった.芝居の中での唄の決着のつけ方とタイトルの持つ意味との間に微妙なズレを感じたからだ.
悪魔の唄、そっか、悪魔の唄なのか…

でですね、私はとても良い作品だと思ったのですよ.『マイ・ロックンロール・スター』の頃より格段に洗練された作品を出してくるようになったなーって、なんていうのかな、グロで驚かすって部分はあるんだけれどもメジャーを狙えるっていうか、そういう作品だと思うのです.

ホラーだということで構えていったのに、ホラー部分は全然怖くなかった.
でも、銃はやめて!
本気で怖いから!
もっともっと台詞やストーリーに集中したかったのに、銃を出されると途端に手に汗をかくほど緊張して脳が働きを止めてしまう.しょせん舞台の上の作り物の世界だというのに、なんで私はこんなに銃が怖いんだろう.
ナイフとか刀は平気.でも銃はダメ.
刃物は一応距離感ってのがあるでしょ.接近しないと使えないからこちらも人の動きで予想ができる.だから安心して眺めていられる.
それに対して銃って一瞬でしょ.遠くからでも撃てちゃうんだもん.だから銃を持ってる人がいつ引き金を引くのかわからないという緊張感が、もー耐えられない.フィクションでも耐え難い.
銃さえなかったらもっといろんな台詞を拾えてたのに…
半分からは銃の存在に緊張しすぎて芝居に集中できなかった.くっそー.