オレステス@シアターコクーン

【作】エウリピデス 【演出】蜷川幸雄
藤原竜也 中嶋朋子 北村有起哉 香寿たつき 吉田鋼太郎 瑳川哲朗

うーん、萌えが足りん。なんだろう、この物足りなさは。


ギリシャ悲劇にはズドンとくるような感情の揺れみたいなものを感じたいのだけれど、今回は入り込むまでいかず最後まで淡々と見てしまった。
既知の話でも、それを目の前で見ることによる新しい衝撃が欲しかった。
今回降り注ぐ水が芝居のアクセントして使われていたものの、蜷川ギリシャ悲劇によくあるモノクロームなシンプルなセットや衣装にコロスの演技にちょっとばかし飽きてしまった。特にコロスの演出は定番になっているので、たまには違うのが見たい。いつもはそれほど思わないのだけれど、今回は悲壮な表情で大声はりあげてるコロス達が滑稽に見えてくるという、コロスの役割をまったく無視した見方をしてしまった。
最後のアポロンは声だけで処理されていた。個人的には実際に登場してほしかった。声があれほど声優っぽくなければまだ良かったんだけどなあ。


達者な役者ぞろいなので誰が出ても安心は安心です。ただこの話ってエレクトラやピュラディスの異常なまでのオレステスへの執着がある種近親相姦や同性愛的なものを漂わせていると思っていたのだけれど、今回の舞台は密着したスキンシップはあったもののそこに危うい空気を全然感じなかった。今でこそタブー視されてる近親相姦や同性愛ももギリシャ神話とかじゃ普通のことだし、もしかしてこの健全さこそが本来あるべき姿なのかしら。
中嶋朋子エレクトラは大竹&寺島のWしのぶのエレクトラが強烈な意思を放っていたのに比べると線が細い。これまでのイメージではエレクトラのパッションにひきずられるオレステスだったけど、今回は藤原オレステスが主導権を握っているように見えた。
そしてやけに雄雄しく出来る奴オーラ満載の北村ピュラディス。
そう思うと、同じ題材で毎回違う関係性を構築してくる蜷川さんはやっぱり凄いのかもしれない。