『tick,tick...BOOM!』@世田谷パブリックシアター

【作詞/作曲】ジョナサン・ラーソン 【演出】吉川徹
山本耕史 愛内里奈 ゲイリー・アドキンス

これさー、見ちゃうとやっぱり『RENT』が見たくなるよ.
前哨戦は楽しみました.で、本編は?っていう.
こんなにも音楽を愛していた作家が、こんな素晴らしい作品を生み出したんだよってことを見せて欲しくなった.


3人の物語かと思いきや、かなりな重さで山本君主演のストーリーだった.山本君以外の2人は複数のキャラを演じていたりして予想以上に脇役感が強かった.3人のハーモニーがもっとたくさん聴きたかったな.
ジョナサン・ラーソンの自伝的作品という前知識のみで行ったので、てっきりほぼ歌ばかりで進むのかと思ってたら意外と台詞が多い.
冒頭で繰り広げられる90年代アメリカの青年が抱く焦燥が、日本人の私にはなかなかにわかりづらい.知識としてはわかるけれど実感は難しい.ベトナム戦争とかヒッピー運動とかそういうこともあったんだっていう既に歴史の1ページになっちゃってるから.そういう不満や焦りをどうせなら歌にのせてくれればいいのになと思ってしまった.作品のトーンに慣れる序盤の頃にあのモノローグうだうだは私にはちょっときつかった.臭い台詞だからこそ歌って欲しい.英語だと多分気にならなそうだなと思ったので日本語の特質のせいかしら.
夢見る若者の気持ちが痛いほど詰まっている作品で、これから夢を掴もうと思っている若者には応援歌になるのかしら.でも既にその時代を過ぎた私からするとマイケルやスーザンの言葉の方に共感してしまうんだよねえ.ジョナサンがいつまでもああいう気持ちを持っていられたのも才能の一つだと思う.
山本君は衣装が一緒なのが不満っちゃー不満.1回くらい衣装替えしてくれたっていいじゃない.活き活きと動いて歌ってとても楽しそう.ただ彼は動きの引き出しが少ないのかいつも同じノリになるのが気になる.HEDWIGの時はああいう動きじゃないと思いたい.
愛内里奈は超かわいいというわけではないけれど醸し出す雰囲気がキュートで山本君とのツーショットがお似合いだった.歌も安心.つかそれが一番良かった.安心して見ていられるって素晴らしいわー.劇中ソロには聞き惚れた.スーザンのピンク衣装がいまいち.
ゲイリーは日本語がどうしても気になる.発音が英語のままだから最初日本語喋ってるって気づかなかった.ゲイリーをキャスティングした時点でちょっといびつでも彼は全部英語にしちゃえば良かったのに.実際台詞でかなり英語で喋ってたし字幕出せばすむことだしって思うもののやっぱり難しいんだろうなあ.途中1曲だけあった英語詩の歌があんなにかっこよいんだから他のも聴いてみたいじゃん.
何はともあれ3人の声の相性が良くて歌が安定してる.3回目でこの出来なら上々でしょう.