HEDWIG bAND THE ANGRY INCH

【演出】鈴木勝秀
ヘドヴィグ 山本耕史
イツァーク 中村中

凄く好き.何よりも作品そのものが好き.最近実はHEDWIGの映画を暇さえあれば流してた.曲のどれもこれもが素晴らしい.
文章書く気力がないので箇条書きで.

  • 今回2列目センター寄りというライブ感覚で見るにはたまらん席だったので、細かい仕草から表情までばっちり観察させてもらえた.
  • 事前に少し心配だったいつもの山本君の動きが封印されていたので安心した.結構映画のHEDWIGと同じ動きをしてるのね.高いヒールの扱いも慣れたもので凄く計算して動いてるのがわかった.
  • 途中まで、というかHEDWIGがカツラを脱ぎ去るところまでは「HEDWIGを演じる山本耕史」を見ていたと思う.日本語だからHEDWIGは「あたしはね」っていう言葉使いをするじゃない.HEDWIGがその「あたしは」っていう言葉を使う重さみたいなものがあんまり感じられなかったの.この人が背負ってきた過去とかプライドとか怒りとかやるせなさとか、とにかくいろんなものがグチャグチャに混じりあってて、そんな自分をあけすけに人前に晒してる開き直りっていうかむき出しな感じが伝わってこなかった.
  • でもいざカツラを取ってからは、なんだか物凄く純粋で愛しい存在のHEDWIGがいた.あの抜け落ちたような子供のような表情にはやられた.まるで生まれたての赤ん坊のようでギュッと抱きしめたくなる.あの最後のためだけに会場に通ってもいいってくらい惹き込まれてしまった.ちょっとね.最後の歌には涙が出そうになりましたよ.
  • とはいえ、やはり物足りなさもあるわけで.かなり満足したんだけど、見終わったら三上さんのヘドが見てみたくなってしまった.彼の女装役を寺山修二ものでかつて見たことがあるのだけれど、そりゃもうその負のオーラと猥雑感と押し出しの強さとは凄かった.だから三上さんのヘドって多分全然意外でも何でもなくてぴったりはまってたんだろうと想像できる.山本君はどうしても前向きなプラスのパワーに溢れてるからね.怒りや凹みや僻みといったものがマイナス方面に働かないで全てプラスに働いちゃうようなイメージがある.だからギリギリの綱渡りのような危うさってのがなかなか感じられなくて(除:最後の場面).あれだけ歌えて動けて感情表現の出来る人なんだからこっちもどうしても要求するレベルが高くなってしまう.もう少し下品で下世話で毒っぽいとこが出せるともっと魅力的になんだけどなあ.
  • 今回は演出と物語の流れに気を取られてしまったので、残るあと2回の観劇ではもっと山本君の演技に集中して楽しみたい.今回が2回目だという一緒に行ったアキさんによると初日近辺に比べると随分進化してるってことなので楽日にはもっと山本君なりのHEDWIGになってるのではと期待できそう.んでもって私はもう少し真剣に歌詞を覚えます.
  • 貼りついたようなメイクには驚いたけど、その後の演出でその貼りつき具合に納得した.ああいう風しか出来なかったわけか.毛皮の帽子&コートが物凄く似合っててシルエットが綺麗だったから、どうせならもっと衣装とカツラを替えて欲しかった.ボンテージ風のぴったりした衣装だから上に重ねる分にはいくらでも着れるはずなんだけどな.もったいない.
  • 英語で歌ってくれたのは嬉しいけれど、もともとこもるタイプの声質だから張ってるところ以外は聞き取りにくかったなあー.映画ではもっと歌詞が聞き取れたのにかなり聞き取り出来なかった.残念.どうせなら一部じゃなくて全部英語詞出してくれたらいいのに.今回英語で歌うって知って慌てて映画を見て予習た.『Origin of Love』の歌詞に初見ながら感動のあまりに泣きそうになって、『Angry Inch』での怒りに震えて、どの曲もHEDWIGの心の叫びに溢れてた.だからこそ今回の芝居であの重要な歌の歌詞が客に伝わっているのかが心配になった.あんなにいい歌詞なのにそれがわからなかったっていうならもったいないんだもん.
  • 映画では説明の無かったところと映画しか説明の無かったところがお互いに補完しあっていた.おかげで初めて繋がったところも結構あった.
  • 凄く無茶を言ってることは承知で、これ、オールスタンディングでやりませんか?歌の部分は完全にライブ気分で楽しんでみたいなあ.