ドラクル@シアターコクーン

長塚作品にしてはロマンチックにまとまっててコクーン仕様といった印象.感想後ほど.
【感想追記】

作・演出 長塚圭史
市川海老蔵 宮沢りえ 永作博美 渡辺哲 山崎一 手塚とおる 山本亨 市川しんぺー 明星真由美 中山祐一朗 勝村政信

そういえば初日空けて間もないんだったわ.その割りによくまとまってたんだじゃないかなあ.各々キャストがしっかりその役になってた.っていうかその役に見えた.
ストーリーのネタバレありなので未見の方はご注意を.
長塚作品にしては笑いがほとんどなく、ひたすらシリアス尽くしでこちらに気を緩める時間を与えてくれなかった.こういうわかりやすく綺麗なお話を長塚さんが書いてきたことに驚いた.
前半と後半で舞台となる場所が違うので出演者ががらっと変わるため、休憩を挟んで2つの世界を見ることができる.事前情報ゼロだったので主役がジル・ド・レイだとわかり俄然興味がわく.ドラキュラといえばルーマニアだけれどもフランスと絡めてきましたか.ミラ・ジョヴォヴィッチの映画や『ひばり』の影響もあって神と信仰に対する希望と絶望を意識しながら見ることとなった.ジャンヌの生涯をああいった作品で見ておいてよかった.ジャンヌを失い彼がどれほどの喪失感を味わったか痛いほどわかるから、途中からリリスよりもそこには居ないジャンヌの影を追って見てしまっている自分がいた.
リリスは実際のところレイを愛してたのか利用してただけなのかどっちだ?利用するうちに本当に愛するようになったのかと思っていたら最後の告白でとんだドンデン返しですよ.思い返すとレイよりもリリスのほうがよくわかんない人物だった.二人の男性から熱烈に愛される聖女のように描かれていたけれど、実は「あの女を見ると反吐が出る」と言ってたしんぺーさんの感想が正しいのかもしれない.最後の最後に追い討ちをかける告白をするのも、結局自分が許されたいからと取れるし、無意識のうちに自己防御のために人を傷つけるタイプの女性なんだな.まあそれだからこそファムファタルなのか.
1幕目は仲間の吸血鬼が登場し吸血鬼の世界を印象付けるためなのか、立体に構築したセットといびつな線が活かされた演出だった.ただ最初作品のテイストが未知だったので、中央⇒右⇒中央⇒左といったふうにいったりきたりし続けるセットに少々飽きてしまった.特に前半しばらく暗いシーンが続くのでオープニングの吸引力に欠ける.そのせいか開始20分くらい眠気と戦うことに….状況設定がクリアになってからは引き込まれるので、もっと早くネタばらししてしまってもいいと思う.
後半は一転して空間移動の無いstaticで直線的な印象のセットだった.全編を通し生演奏のストリングが不安感を掻き立てる音楽を合間合間に鳴らしていた.長塚作品にはありがちなスプラッタやグロは無くはないけれど随分と控えめだった.それでもおそらく歌舞伎ファンかと思われるご年配の方々はびっくりされてた模様.

役者陣は芸達者が脇を固めてるので安心.
新ちゃん、もとい海老蔵.心配してたよりは良かった.ただ歌舞伎でもありがちだけどどうも過剰なところがあってそれが悪目立ちしてるのも否めない.感情が沸き立つ場面になると途端に歌舞伎演技になっちゃうの.手の動きとか足の動きがね、身に染み付いたもので彼の中ではあれが自然な動きなのかもしれないけれど、どう見てもフランス貴族じゃない.1幕の静かで優しいところは意外と頑張ってたと思う.なにせ光源氏でプッと吹き出してた私が吹き出さなかったんだから.私はもともと海老蔵ファンなので好意的な目で見てはいたけれど、浮いてなかったとは言わない.良くも悪くも普通じゃない感じが吸血鬼だといえばそうかなーっとここはあくまで好意的に捕らえてみる.あ、あと歌舞伎では利点な顔の大きさも現代劇だと周りが人一倍小さいだけに目立ってた.りえちゃんとのface to faceは危険!
りえちゃんはロープの役よりこういうのほうが好き.すっかり耐える女が似合う女優になったね.
山崎さんがいてくれるのが非常に心強い.気弱な勝村さんも素敵.