Kazuo Ishiguro「Never Let Me Go」

Never Let Me Go

Never Let Me Go

面白いです.ちょっと久しぶりにKazuo Ishiguroの世界にもってかれた.
donorとcarerとHailshamという単語が持つ意味が分かり始めた頃からぐぐっと引き込まれた.Kazuo Ishiguroにはよくある過去と現在が交錯する語り口が非常に効果的で、まるでちょっとしたミステリーを読み解く観もあった.Kathyの一人称なのでdonorとして運命付けられた彼ら側の視点で世界が語られる.でも実はその裏に居る、彼らを作ってある意味目を瞑り放置している人間達が常に薄気味悪さを感じさせている.隔離されている世界ならまだしも、同じ道を歩き同じ店に入り、なのにまったく違う世界を生きているのが残酷だ.ただdonorにしかなり得ないというのに、将来の夢を語り、優劣に憂い、むしろ普通の子供達よりも無邪気に日々を過ごす彼らに対応する人間達、大人たちのなんと奢っていることか.人間らしい生活を与えてやることが本当に幸せなのかという問いの前に、臓器を取るだけのための対象に人間としての感情をもたせることを有りとする世界にまず戦慄する.薄々自分達が外の人間と違うと感じて成長してきたせいか、彼らは4th donationを割と淡々と受け入れる.彼らは怒りや恨みを発するでもなく静かな諦めの中で生きている.何故なんだろう何故なんだろうって一生懸命探って探りつくして疲れてしまったのかとも思う.completedという単語がなんともショッキングだった.
何度も途中放棄してる『The Unconsoled』にまた手をつけようかと思いつつ、あまりに長時間ほったらかしてたら黄色く変色してきてしまった.実はDickensの『A Tale of Two Cities』が今一番読みたい.確かPenguin Classicsで持ってるはずなんだけど見当たらない.