『黒蜥蜴』@ル テアトル銀座 

原作:江戸川乱歩 脚本:三島由紀夫 演出:美輪明宏
黒蜥蜴:美輪明宏 明智小五郎:高島政宏 須藤温子 木村彰吾 田口計 有田麻理 城月実穂 江上真悟 平田桃介 倉持一裕 ほか

速攻で会社を出て美輪さんの『黒蜥蜴』を見に行く.平日6時半開演はきついです.そんな早くに始まったのに終わったのは10時半近く.ながー.
お久しぶりのキューピーさんとはなぜか携帯のカメラの話で盛り上がる.猫ちゃんの写真が可愛い.とても7キロあるとは思えないシャープな顔立ちの美人猫だった.うちのウダは体も丸いが顔もまん丸だもん.

お芝居はというと、セットがやけに豪華だった.壁の装飾とか、ここはベルサイユか!?と言いたくなるほどきらびやか.次から次へと変わっていく美輪さんの衣装も豪華.素材感たっぷりで動くたびにまさに衣擦れの音がした.舞台に登場するたびに良い香りが会場中に漂ってくるのもすごい.が、お芝居的にはどうなんでしょう.乱歩の様式美というのは下手するとコメディに転ぶのね.特にラストの高嶋兄の仁王立ちでの悲嘆の台詞はコントかと思った.他の若手の俳優に比べると全然上手いんだけど、高嶋兄の持ってるオーラが突き抜けた明るい太陽なだけに明智小五郎に見えない.榎木さんの明智バージョンが見たかった.それから、いつも不思議なのが美輪さんの俳優の趣味.黒蜥蜴の一番の手下をやってた若い男優が下手で下手で.彼の見せ場なんて「下手だなあ」しか感想がない.『愛の讃歌』でもテオ役の若い子はドがつくほどヘタクソだったから、あの手のタイプは美輪さんの趣味以外のなんでもないんでしょう.とりあえず不思議な芝居だった.やっぱり美輪さんは歌があったほうが楽しめる.


【追記】
新劇風の芝居(勝手に想像)とでもいうのか、普段あまりなじみのない大芝居で見ていてこそばゆいところもあり.美輪さんはあの貫禄なだけにどれだけ大芝居になっても納得できちゃうんだけど、若い人は辛いわねえ.ニヒルさクールさの表現が、私達の世代から見ると石原裕次郎の何がどうかっこいいのかさっぱりわからないのと同じ感覚でちょっと時代錯誤っぽく映った.特に黒蜥蜴の手下で一番目立ってた若い男性が、まさに一昔前のいい男の見本のようでかっこつければつけるほどあちゃーって感じ.へったくそやなあって見てたけど、この手のタイプの芝居ではあれでいいってことなのか.慣れてないからよくわからない.

エリザベートに続き舞台は2度目の高嶋兄は、舞台の芝居が合っていると思う.背も高いし存在感あるし声も通るし.ただ明智にはどうなんだろう.一緒に行ったキューピーさんとも意見が一致したが、明智ってなんとなく都会派のクールでちょっと影のある男ってイメージを持ってたのに高嶋兄だと陽気なイタリアンにしか見えない.まったく影が無いというのもお得な個性だろうけど明智にはなあ.ラストシーンはどこのコントだと思わず噴出しそうになった.黒蜥蜴と明智の悲恋と悲運の余韻に酔うどころの話じゃない.おかしいなあ.榎木さんのが見たかった.

美輪さんの黒蜥蜴はいいとか悪いとか判断する前に、もう力ずくで納得させられちゃう.美輪さんが20代の女の子の振りするんだよ.そりゃもうびっくりだ.次から次へと変わる衣装を見てるだけで楽しい.ドレスひとつとってもどっしりとした素材感たっぷりでそりゃもう豪華.美輪さんが動くたびに衣擦れの音がするの.今までドレス芝居見てこれほど衣擦れの音がするのって一度も無かった.美輪さんが登場するたびに会場中がふわ〜っと良い香りに包まれるのも凄い.香水使いが上手いなあ.

愛の讃歌』はああいう芝居だったから美輪さん一人舞台なのかと思いきや、明智探偵がいようがいまいが美輪さん一人舞台には変わりがなかった.あのオーラに対抗できる人はそうそういないでしょう.美輪さんに関しては芝居よりも歌のほうが好きってのがよーく実感できたから、次は音楽会に行きたい.