『夜叉ヶ池』@東京グローブ座 

原作:泉鏡花 演出:加納幸和
佐藤アツヒロ 松本莉緒 岡本健一 加納幸和 花組芝居役者連

グローブ座に『夜叉ヶ池』を見に行く.今まで確かにおもしろくな〜いっと思いながら見てた芝居がないこともない.んがっ、途中退場しようかどうか迷った芝居はこれが始めてだ.本来楽しくあるべき観劇が苦行となってしまった.鏡花でしょ、あの幻想的なチラシでしょ、当然ちょっとはお耽美風な芝居を想像するじゃない.しかもよりにもよって私の中の『夜叉ヶ池』イメージは玉さんの映画だし.なのになぜか舞台の上ではよーわからんサーカスのようなチンドン屋のような馬鹿騒ぎがおこっているのですよ.言っておくけど私はお馬鹿芝居は大好きなの.心から楽しめるの.でもこれはダメ.ビンボー臭いカカシみたいなのがずーっと出てきたり(なにあの可愛くない犬の顔は!)、全然おもしろくないギャグの連発で失笑すら漏れません.最初のジャニーズ組の芝居では抑揚がなくて眠くなり、早く花組の人が出てこないかなあって思ってたのに、花組連が出てきたらもっとトホホ気分になるとは.「あれが花組」と言われたら、もう「私には合わない」としか言えません.最後まで主演3人と花組連がかみ合わないまま終わってしまった感じ.不思議なことに役者に文句はない.原因の100%は演出.さむかった.


【追記】
そもそも鏡花の世界の解釈を受け入れられなかった.花組の鏡花ってああいう馬鹿騒ぎなの?『婦系図』はそんなことなかったのに、さむい演出満載で見てるこっちの心もさむくなった.せっかくだから楽しもうと頑張ってみたけど徐々にショボーンと下向くしかなくて、あまりの居たたまれなさに本気で途中退場を考えた.初めて「金返せ」って腹がたった.

学芸会のセロハンみたいな布とかテキ屋の景品にありそうな可愛くない犬のぬいぐるみの顔のついたカカシのようなハリボテとか貧乏くさいったらない.キャーキャー騒ぐ妖怪にいい加減うんざりしてるところにこんなヘンテコなセットまで登場して、もう耐えられない.うんざり.唯一おもしろかったのが客いじりってどうなのよ.本編でおもしろくしてください.

アツヒロ君や岡本君はそれなりに良かったと思う.松本莉緒は最初は良かったけど、だんだんいつも笑ってるかのような締まりのない表情が鼻についてダメだった.最初の30分あまりの延々3人芝居が続くシーンは眠気に襲われ、早く花組出てこないかなあって思ってたけど、後から思えばあの30分が一番幸せな時間だった.花組以外の3人と花組の役者達がとても同じ舞台に立ってるとは思えないほどチグハグで、最後の大団円なんてなぜ同じ板の上にいるのか不思議でならなかった.トーンの違う2つの芝居を一緒に見てるみたいで非常に居心地が悪い.

全編通して「本気!?」「はぁ?」「えーっ?」の連続.本人達にとったら大きなお世話でしか無いだろうけど、こんなことやらされてる役者が不憫に思えてしょうがなかった.トラウマになって今後花組の芝居が見に行けなさそう…