河合隼雄+石井米雄『日本人とグローバリゼーション』

日本人とグローバリゼーション (講談社+α新書)

日本人とグローバリゼーション (講談社+α新書)

おもしろかったなあ.グローバライズというのは西洋にとっては自分達の考え方、やり方、下々の輩に教えてやるという意味合いが強いというのは、言われてみればそうだな.世で流行の「グローバル」って言葉を聞いて、漠然と「世界化??」って思ってたけど、アメリカの辞典なんかだと「超大国が資源、労働力、情報、運輸、財政、分配、市場を統合し、グローバルなスケールでこれを相互依存の状態に置く、そういう結果をもたらすような経済的、帝国主義的な拡張主義のいっそう進んだ段階」って説明されてるんだって.帝国主義だよ、帝国主義.つまり単純に言えば世界の強国の中じゃ「グローバル化=西欧化」ってことじゃん.それを自覚してないってすごく怖いことじゃん.それとも私がのほほんとしてただけで、大半の日本人はグローバル化ってのはそういうことだってちゃんと認識してんだろうか.


多分西欧諸国も日本をより下の国とは思っていないだろうけど異質な国とは思ってるだろうなあ.その点西欧はキリスト教という一つの理念である意味アイデンティティを同一にしている強いよね.わからなくてもわかるっていうかさ.


「中空均衡型」(日本)と「中心統合型」の比較もおもしろかった.全体で上手くいってはいるけど中心がパワーやプリンシプルをもっていないという不思議な体系がなりたっているのが日本の特徴だ.
「日本人は管理職に対してリードすることは期待しない.むしろいかに調整してくれるかを期待している人が非常に多い」
うん、良く分かる.実際自分も調整してくれることを望んでるかもねえ.口じゃビジョンが見えんとか文句を言いつつ、きっちりプリンシプルを打ち出してくる上司がいたらそれはそれで押し付けがましく思ってしまうかも.
「中心統合型は必ず悪を作る.中心に反対するものが悪魔でありシステムの方で除外しようとする.プリンシプルに反するものは共存できない」のに対し「中空均衡型は違うものが共存しつつ、かつお互いに調和的に存在する」というのは、昨今の世界情勢を見てると頷けるものがありますなあ.そしてわたしはどうしても宗教の影響力というのを感ぜずにはいられない.日本人は節操がないと言われるけど八百万の神も仏様もいっしょくたに神様として崇められるずぼらさというかおおらかさは良い資質なんじゃないかしらね.


それから西欧(だけじゃないんだろうけど)における論理の重視というのもわかりやすく紹介してあっておもしろかった.日本人は欧米で1人の人間が子供から大人になっていく過程でどれだけかっちりときたえられているかということをもっと知るべき、つまり欧米人の強さ、怖さというものを知らな過ぎると提言していた.イギリスに住んでたときの話で、近所の5歳の子供ですら自分が納得するまで質問をやめない.その時に言う言葉が「I do not understand」じゃなくて「I am not convinced」だって話.5歳の子供ですら「納得させる話をできないお前が悪い」という思考を持ち、言葉で説明し議論するという育て方をされてるから、そりゃ日本人はかなわないって.でもこの2人はそこで負けないで、ちゃんと「日本人はこういう考え方をするんだ」ってのをちゃんと言葉で説明して納得させている.全て相手に合わせてるんじゃグローバル化とは言えないじゃんってこと.例えば、日本人はよく「はい、はい」の意味で「yes,yes」と言ってしまうけど、向こうの「yes」には「自分は了解した=自分に責任が生ずる」ってことになる.後でもめないためにも「日本人の言うyesには“了解”の意味合いはない」ということを説明し納得してもらっている.小さいことだけどこういうことの積み重ねはコミュニケーションを取る上でとても大切だと思う.特に海外とのやり取りのある仕事の現場にいるとそう思うことがとても多い.日本人は「説明しなくても汲み取ってくれるはず」という相手への信頼度がすごく高いし、実際それで上手くいってる場合が多い.でも対海外でもそれをやろうとして、後で面倒なことになってるのを端で見てると学習能力がないのかしらって呆れちゃう.自分達がそういう努力もしないで、わかってくれない相手側の文句ばかり言うんだよねえ.どうだろ、それ.