若き日のゴッホ 

日生劇場

作:ニコラス・ライト

尾上菊之助 桃井かおり 京野ことみ 小橋賢児  池脇千鶴 

菊ちゃんと桃井かおり主演の舞台『若き日のゴッホ』を見に日生劇場へ.音羽屋受付には洋装の菊ちゃんママがにこやかな笑顔をふりまいていらした.きれいねえ〜

1列目ほぼセンターという席は結果的に良いんだか悪いんだかよくわからなかった.
[良い点]
表情がしっかりわかる.小さい台詞もはっきり聞こえる.
[悪い点]
とにかく舞台が高いため舞台上のテーブルが死角となり見えない場面がたっくさん.テーブル上の絵も料理もテーブルの向こうの出演者も椅子に座ってる菊ちゃんの顔も全てが見えません.どうなのこれ.


さて、芝居はというと…


うーん、いろんなところの感想で見かけたのと同じく「小屋が大きすぎ」です.動きが少なく派手な演出があるわけでもない少人数での、ある意味地味〜な芝居をなぜこんな大きな劇場でやるんだ.これは世田谷パブリックシアターの芝居でしょう.そういう点でいえば、芝居の世界を凝縮して見られた1列目で良かった.2階席なんかチマチマした芝居にしか思えなかったんじゃないかしら.


そもそも私ゴッホって嫌いだったんだわ.最初からそういう目で見てるせいか、いちいちゴッホの吐く台詞が癇に障ってイライラしてしまった.妹が出てくるにあたっては、んもう、あまりの頑なさ、自己中心さに本気で腹が立ってきた.悪気がないのに他人を傷つける人ほどたちの悪いものはない.


アーシュラの幸福そして苦悩は伝わってくるんだけど、ゴッホのほうがさっぱりわからない.この人は何を思ってああいう行動を取ったんだろう.インタビューや評論を読むと「同じもの見ることの出来る2人の認められない愛」だの「強く求め合いながらも共に生きることの出来ない2人」だのとあるけど、どうしてもゴッホが最後まで彼女を愛してたようには思えなかった.明らかに「ここが感動のしどころですよ!いいですか!」って言うべき最後のランプのシーンもとってつけたように見えてしまったのは、私の経験不足なのか役者の演じ方不足なのか…


桃井かおりはとても自然で良かった.ゴッホと知り合う前、知り合った後、ゴッホが去った後と3つの時期の婦人の気持ちがちゃんと演じ分けられていた.全然普通の台詞でも桃井かおりが言うとおかしかったり寂しかったりするのね.


菊ちゃんはこの役にあってたんだろうか、そもそものキャスティングに疑問を持った.だっていろんなエピソードから見えるゴッホ像と菊ちゃんって全然リンクしないんだもん.ああいうちょっと危ないくらいの激情家で周りから煙たがられるキャラクターって菊ちゃんとまるで被らない.すごくがんばってるんだけどどうやっても生来の育ちのよさが消しきれてない.だからゴッホとしての下品な台詞や無神経な台詞が浮いて聞こえちゃう.桃井かおりがずーっと菊ちゃんのことを「菊様」って呼んでたけど、その呼称になんの疑問もわかない人がゴッホってのはねえ、やっぱり無理があると思うのですよ.


京野ことみは可愛かった.こういうコスチュームプレイ物のほうがあってるんじゃない.マイロックンロールの時より全然良かった.


小橋賢児池脇千鶴共に無難にこなしてたように思う.でも私にとって魅力的な役者じゃないなあ.