東宝ミュージカル『十二夜』@帝国劇場

【原作】シェイクスピア
【訳】小田島雄志 【脚本】堀越真 【演出】鵜山仁
大地真央ヴァイオラ
愛華みれ:オリヴィア
鈴木綜馬:オーシーノー公爵
本田美奈子:猫
川粼麻世:道化
岡幸二郎:セヴァスチャン
鷲尾真知子:マライア
上條恒彦:マルヴォーリオ
安崎求:サー・トービー
治田敦:フェービアン
山形ユキオ:サー・アンドルー
越智典英:アントーニオ(船乗り)
秋山雅史

えーっと、普通に楽しかったです.そもそも原作自体がシェイクスピアお得意の入れ替わりコメディーなので、メッセージ性がどーのとかそういう小難しいことを考えないで気楽に見ることができるミュージカルだった.


それに何よりメインのキャストがみな綺麗!B席からぐっとオペラグラスを握り締めているのが悲しくなり、気づいたら休憩時間にチケット窓口で「いつでもいいんで1階前方センターのある日をください!」って言ってた.おかげさまで2列目センターがGETできましたわ.うふふ〜.


話はというと、兄妹の出生がやたら訳ありになってたり、執事が最後まで檻から出してもらえなかったり、サー・アンドリューがヘンテコリンなちびっ子になってたり、原作にはいない猫が登場したりと、細かい点ではいろいろあれど展開的にはほぼ原作通り.ただそのおかげでセバスチャン@岡さんはやっぱり出番が少なかった.ちっ.その点オーシーノの鈴木さんは見せ場がたくさんあって羨ましい.


楽曲も特別心に残るナンバーはないもののガクッとくるようなのもないので私的にはOK.いまだに『エリザベート』の『最後のダンス』のショックは忘れられん.ああいうコテコテの歌謡曲調な曲がなかっただけでもかなり好感度アップ.


キューティーハニーのような愛華さんのカツラ&衣装やメーテルのような大地さん&岡さんのカツラも全然許容範囲、というよりむしろ好き.確かにだるま落としみたいなドレスやハート大フューチャーなドレスなんかは変なデザインだなあって思ったけど、ああいう全てが作り物の世界感にはぴったりはまってたと思う.大地さんの女性の時のカツラはどれもこれも相当にいっちゃった髪型で「あれはアリなんだろうか」と疑問に思わずにはいれらなかったが、大地さんだと思うと「ああアリなのね」と自然と納得させられちゃった.


これはシルク・ド・ソレイユか?って突っ込みたくなるようなカラフルな衣装にアクロバティックな動きのアンサンブルもいい.アンサンブルの見せ場は全体が見渡せる分2階のほうがいいかもね.前方で見たら忙しくて目が回りそう.


プリンシパルではなんといっても大地さん.いやーキレイですわ.2階席から見てても綺麗オーラがばんばん飛んできた.そういや大地さんを生の舞台で拝見するのはこれが初めてだったんだわ.女性に戻るとやっぱりどっかオバサンっぽくなっちゃうのが不思議なんだけど、小姓姿は絶品.実はお小姓の大地さんを近くで見たいがためにチケット取りに走ったってのもほんとなのよねー.歌はというと、正直もう一人の愛華さんが相当ダメダメだったので大地さんのは気にならなかった.他の3人がでかいせいか意外と小柄に映った.その分顔も小さい.さーて、次回はじっくりお化粧を観察するぞ(笑)


対する愛華さん.ウッチャンのドラマに出てたときは好きだったんだけどなあ.舞台よりテレビ向きなんじゃないかと思ってしまう珍しいタカラジェンヌだった.どれほど派手な衣装を着てもどこか地味.なんていうかパーッと観客を圧倒するパワーに欠けているように見えてしまった.2幕の頭なんてまさに見せ場なのに「がんばってるね」って思わせてしまうあたりもう少しなんとかならないのかしら.期待してただけに残念だった.そしてなんといっても歌が….最初の方はそれほど気にならなかったんだけど、時間が経つにつれ周りとの差がどんどん目立ってきてしまい、男性陣とのデュエットなんてほんと辛かった.声質が歌向きじゃないのかしら.ああ、あと映画で同じ役を演じたヘレナ・ボナム・カーターがあまりに素晴らしかっただけに、無意識に比べちゃったのかもしれないな.


オーシーノ役の鈴木さんはエリザベートの皇帝閣下や元ジャベールからの印象からして気取った役がお似合いなのかと思いきや、意外とコメディーセンスのある方らしい.笑いの間の取り方が上手なので笑いを取るべきシーンで無理なく笑いを取っていた.素晴らしい.全然関係ないが、公爵の履いてたゴールドの靴のかかとだけが悪目立ちするオレンジだったのが2階からだととても気になった.近くで見たら違う色なのかしら.


さてお目当ての岡さん.いやー、ご本人がとても楽しそうで、それを見ているこっちも楽しい.大地さんと同じようなメークをほどこし金髪ロン毛をなびかせてる姿を見ると、とてもこの間まで冷徹ジャベールを演じてた方には見えません.薄いパステル水色のお貴族様衣装を一分の隙なく着こなしているあたりさすとしかいえません.鈴木さんも川崎麻世も背が高いはずなのに岡さん一段と背が高く見えたのはブーツのせいか?そして何よりあの美声.第一声を聞いた途端うっとりですわ.最近CDではちょくちょく聞いてたけど、この声が一番映えるのはなんといっても舞台ですね.できればもうちょっとたくさんソロが聞きたかった.いや、ソロとまでは贅沢はいいません.せめて4人のデュエット(4人でもデュエット??あ、カルテットか)じゃなくて男性2人のデュエットが聞きたかった.絶対素敵だと思うなー.次回は大地さんだけでなく岡さんのメークもチェックするぞー.


川崎麻世の道化はある意味オーソドックスなシェイクスピアワールドの道化だった.あれを川崎麻世タイプの人がやるのはかなり難しかろう.萬斎さんの『ハムレット』の時のように見るからに観客が道化というサインを見い出せる見た目の人なら、あの手のくだらない駄洒落も受け入れられやすいけど、川崎麻世のように道化からは程遠い見た目の人が同じような駄洒落を連発しても寒いだけになりがち.そういう難しい役をかなり上手くこなしてたのでは.


本田美奈子の猫は正直よくわかりません.評判はいいようだけど猫好きなのであれが猫といわれてもピンとこないというか.うーん.


ドタバタ3人組ではアンドルーが最悪.ほか2人の出来がいいだけに余計に目立ってしまった.役者のせいというより演出のせい?アンドルーをああいう人にしてしまったのは失敗じゃなかろうか.イギリス人っぽくないんだよ.


マルヴォーリオ役はもう少しあの人の自意識過剰なうぬぼれ具合を強調したほうがその後の復讐のいたずらが効いたんじゃないかな.ちょっと出番が少なくてキャラクターが見せきれてなかったように思う.重要な役だけにあの出番の少なさがちょい不思議だった.その分3人組に時間を使ったってことか.


ま、とにかくメイン4人がきらびやかな魅力を振りまくのを見るにはもってこいな舞台でした.遠くからサーカスみたいなアンサンブルを見るのも楽しいだろうけど、あのプリンシパル達は「これはちょっと目の前で見なくてはっ」て思わずミーハー路線に走りそうになるくらい美しかった.次回はまだまだ先だけど楽しみだー