蜷川幸雄演出『タイタス・アンドロニカス

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

タイタス・アンドロニカス:吉田鋼太郎
マーカス(タイタス弟):萩原流行
パブリアス(マーカス息子):田村真

ルーシアス(タイタス長男):廣田高志
少年ルーシアス(ルーシアス息子、タイタス孫):秋山拓
クインタス(タイタス息子):二反田雅澄
マーシアス(タイタス息子):保村大和
ミューシアス(タイタス末息子):新川將人
ラヴィニア(タイタス娘):真中瞳
 
サターナイナス(先ローマ皇帝):鶴見辰吾
バシエイナス(サターナイナス弟):横田栄司

タモーラ麻実れい
エアロン(タモーラ情夫):岡本健一
アラーバス(タモーラ長男):大友龍三郎
ディミートリアスタモーラ息子):谷田歩
カイロン(タモーラ息子):高橋洋

乳母:山本道子
道化:グレート義太夫

会場に入ると目の前にいきなり衣装の山があってびっくり.しかもその周りで衣装を着てる出演者達が普通に発声練習しながらうろうろしてる.ロビーがその調子なら当然会場内でもリハというか準備の真っ最中.ステージ上には10人以上の役者が揃い、マイク持って指示してる人がいたり通路を歩いてる役者がいたりとおもしろい.当然蜷川さんも混じってた.


私の斜め前には嵐の二宮君(字はあってるか?)が見にきていて、彼に気づいた蜷川さんが席のところで立ち止まり会話を交わしたせいで一瞬客席の視線を集めてたものの、客の年齢層が高かったせいか蜷川さんに注目しても二宮君が誰なのかわからなかった人が多そうだった.


 さて、お芝居はというと原作まったく知らなかったので次から次へと残虐行為が行われていくのにびっくり.血なまぐさい話だとは聞いてたけどこれほどまでとは.ただ極端に明るい照明、真っ白なセットに衣装というライトな味付けだったので、行われる行為ほど残虐なイメージを受けはしなかった.特に強姦されたあげく両手と舌を切り取られたラヴィニア(真中瞳)が両手と口から真っ赤な糸を何重にもぶら下げているのは見ようによっては滑稽でもあって、悲惨なんだかなんなんだかわからなくなってしまった.


タイタスの吉田さんは重厚演技もさることながら憎めないおじいちゃんっぽさがいい.なんだかタイタスがだんだん可愛らしく見えてきちゃった.これってアリなんだろうか.麻美さんほど女王が似合う女優も珍しい.何の説明もいらない.女王がそこにいた.萬斎『ハムレット』でかっこよいホレイショーを演じていた横田さん、今回もばっちりの存在感で素敵でした.何気に一兵卒群に見栄えのよい男性をそろえているあたりが蜷川さんらしい.


一番のお目当ては岡本君.エアロスって一番おいしい役じゃないかしら.何が彼をそこまで駆り立てるかというくらい復讐心に燃えひたすら悪に生きるという、下手をすると嫌悪感しか抱かせないようなキャラクターを、生き生きと艶っぽく演じてくれて逆にかっこよいくらいだった.私が見慣れている岡本君キャラといえば屈折した若者だったりするので今回のこのエネルギッシュな役柄は新鮮だった.蜷川さんのお芝居は13年ぶりということだけど、どんどん出てくれるといいなあ.


3時間という長丁場は、決してあっという間ではなかったけど物語の派手さと演出のシンプルさが上手い具合にあってて予想以上に楽しめた.