夏目漱石『行人』

行人 (岩波文庫)

行人 (岩波文庫)

難しいなあ.前に読んだときも良くわかんなかったけど、今回もやっぱわからん.長野家のまわりにいろんなタイプの人間を配置しそれぞれが非常に象徴的に扱われているんだけど、それが頭の中でカチッと組み合わない.ううむ.多分その昔に読んだときは直にほんのり憧れを抱いていたような気もする.今回も素敵な女性だとは思った.思ったけど、すごくはがゆい.不器用すぎる.まるで自分を見てるかのようでいたたまれない.ああいう女性は案の定幸せにはなれないのだなー.ちっ.
久しぶりに行った図書館で小谷野敦の本をパラパラッとめくったところ、偶然にも漱石の『行人』とドストエフスキーの『罪と罰』を並べて語っていた.『罪と罰』との共通性なんて考えたこともなかった.どっちも大好きな作家だけど、なんていうか同じもの書いてもドストエフスキーのは寒い国だからこその感情過多というか熱に浮かされたような激情家揃いな世界が繰り広げられていて、漱石の世界ってまったく違う印象を受けてた.言われてみれば外に向かうか内に向かうかの違いってことなのかなあ.ひたすら自己の内に抱え込んじゃう漱石の人物のほうがドロドロした地獄を生きていそうではある.ドストエフスキーって悲惨だけどどこか光があるし.両方ともあんなに絶望しているのになぜか滑稽味を感じるところは同じかな.