橋本治『2 栄花の巻(1)』

1巻は中国の秦に始まる革命史だった.そして2巻は飛鳥〜奈良時代の日本の古代史だ.うーん、おもしろい!教科書では数行ですまされてしまう大化の改新の裏の濃密な物語に酔いしれた.稲目・馬子・蝦夷・入鹿と続く蘇我の男たちの考え方の違いや、中大兄皇子を筆頭に天皇家の者たちの思惑など、どの時代にどの境遇に生まれ何を見て何を学んだかにより人がいかに変わっていくかを、揺れ動く時代の中でクロノロジカリーに示すことにより現代にも通じるある種一般化されたモデルのように非常にわかりやすいものとなっていた.「いまだわが国には収めるべき国がない」と鎌足に言われ呆然とする中大兄皇子といった描写で当時の日本の状況がストンと理解できた.また、蝦夷と入鹿という権力を握るために画策した男と握った状態で生まれた男の対比を興味深く読んだ.ある歴史上の出来事が何故起こらなくてはいけなかったのかを文学的な語り口を用いつつ論理的に説明しているのが橋本さんらしい.