秋山香乃『歳三往きてまた』
- 作者: 秋山香乃
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2002/03/01
- メディア: 単行本
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京都を追われたあたりからの話だから死に向かって北上していく姿が辛い.
恐ろしいほど劇的な人生を歩んだ人なのね.
土方が竜馬と共に幕末を代表する人気者だというのもさもありなん.
近藤が処刑されてから後のひたすら戦って戦って死んでいった姿には惚れずにはいられない.
いろんな作家が土方について書いているのも納得だ.
同じ人を指すとは思えないほど異なる印象のエピソードを残す人だから想像力を掻き立てられるんだろうな.
こういう創作物を読むほどに、実際の土方はどうだったんだろうってどんどん惹かれてしまう.
流山では近藤とどんな会話をしたんだろう、五稜郭で戦いの無い時には何をしてたんだろう、最後まで残った隊士達とどんな話をしてたんだろう.
写真が残ってるが故により一層本当の土方像が気になってしょうがない.
つくづく彼が負け側にいたことが残念でならない.勝ち組にいれば例え途中で戦死したとしても、もっと多くの証言が残ってただろうに.
でも負けたからこその今の人気があるのかな.
戦国時代などの武将の逸話はなかば伝説として物語的に受け取ってしまい、実在の人物として感じることはなかなか難しい.
でもこの話ってほんの100年ちょっと前に生きてた人たちのことなんだよね.
ほんの少し前までは当事者が生きてた、そんな身近な時代に官軍と旧幕軍のこんな悲惨な戦いがあったんだね.
同じ日本人なのに…って辛くて哀しい気持ちになった.
今までは漠然としかわからなかった現代にも残る会津と長州とのしこりも、こんな過去があったら一筋縄じゃいかないだろうなあって少し理解できた.
幕末以降の日本近代史って一番興味のない世界だったけど、こうやって一人一人の人物を生きた人間として捕らえられるようになると俄然おもしろくなる.
西洋の接近によって思想の急展開を迫られた時期だからこその複雑さがおもしろいんだろうな.
多分俯瞰してみなくちゃいけないから日本史ではどうしても好きになれなかったんだと思う.
所詮根がミーハーなんで、こうやって各々の人物像にスポット当ててくれると無理なく近づいていけそう.