五月大歌舞伎 海老蔵襲名

5月歌舞伎座市川海老蔵襲名披露公演昼夜通しで見てきた.今回は平日ということもあって1階た列、3階い列と前の人を気にしないでもいい席が取れてたから幸先良くていい感じ.

今日は2階席が女子中学生だか女子高生だかに占拠されててギョッとしたけど、芝居が始まれば静かに見てたのでホッとした.それにしても海老蔵襲名公演を見られるなんて、なんて贅沢なんだ.だってさ、襲名値段だからいつもよりずっとお高いんだよ.2階席なんて一等値段じゃん.いいなあ.1階には当たり前だけど希実子夫人と妹さんが着物姿でいらっしゃいました.

今日の主役はなんといっても新ちゃん、じゃなくて新海老蔵.今か今かとそわそわしながら海老蔵登場を待ってる客席の浮わついた雰囲気がお祭り気分を盛り上げてた.で、そんな客席の気分を裏切るどころか、期待を上回るオーラで出てきてくれちゃうのが彼の凄いとこ.菊ちゃんファンではあるけれど、こういうところは新ちゃんならではって素直に感心しちゃう.

休憩時間に2階に飾ってある襲名のプレゼント(?)を見に行ってみた.ヴィトン特注の衣装入れが凄かった.どこからもらったのかは忘れたけど至る所に海老マークがつけられた鏡台セットも素敵だった.日本画や陶器はもちろん、海老蔵襲名に合わせて作ったという不動三尊像まで飾ってあった.すげー.

◆昼の部◆

四季三葉草


おめでたいってことで三番叟なんだろうか.松緑、顔ちっせ.っつーか三番叟苦手だからそんなことくらいしか感想ない…

玉さんの女暫、団十郎さんの暫に続き新海老蔵の暫です.荒事は単純明快でいいねえ.とにかく権五郎のでかさに圧倒されるもん.花道ちゃんと見えてよかった!無邪気できかんきで正義感一杯で子供っぽいところが荒事の魅力満載で楽しいったらない.悪者の方も憎めないし、首がぴょーんと飛んでるのに笑っちゃうもん.海老蔵は気合いたっぷりで良かった.さすがだったのは三津五郎.上手いねえ.前に見た松緑とは大違い.時蔵さんの照葉は知的な女性の可愛らしさがあってこちらも良かった.

紅葉狩

役立たずの家来(?)は権十郎信二郎の二人がやってた.菊五郎さん、思ったより綺麗だった.マダムっぽくなるのが逆にこの役にはあってたんじゃないかしら.梅玉さんは最近この手の品あるお殿様を一手に引き受けてるなあ.似合うんだけどいまいち華に欠けるのが難点か.一手に引き受けてるといえば亀蔵さん.この方もお亀で不細工な女役をかたっぱしからやってますね.松助さんと二人でお笑い担当路線をいくのかしら.菊ちゃんは山神役.これまで勘九郎さん、吉右衛門さんのを見たけど、一番キビキビした山神だった.まあ、さすがに勘九郎さんの踊りは上手かったけどね、菊ちゃんは生真面目な性格なのか「踊ってます!」っていう段取りっぽさがなくなるともっと楽しく見られるだろうなあ.

伊勢音頭恋寝刃

團十郎さんの貢に芝翫さんの万野、お紺は魁春さん.伊勢音頭に関しては仁左さんの貢に玉さんの万野が自分的には最高だったので、それ以来どれを見ても満足できなくなってしまってる.團十郎さんの貢は二回目だけど、團十郎さんの持つ大らかさや人の良さがにじみでていて、キリキリしてる感じが薄い.芝翫さんは間が上手いけど、席のせいか声が届かなかったのが残念.それになんといっても魁春さんのお紺がなあ.もう少し綺麗にならなかったんでしょうか.これじゃ後ろに控えてる芝雀さんのほうに目が行っちゃうよ.

◆夜の部◆

太平記白石噺

田舎娘の菊ちゃんが見たかったけど、すみません、後半ほとんど寝てしまいました.くぅ.

口上

さすがに幹部勢ぞろいで圧巻です.相変わらずお笑い担当は左團次さんと菊五郎さんでした.そういや梅玉さんも笑い取ってたな.いつもはシンプルな挨拶の菊ちゃんもさすがに幼馴染みの襲名ともなれば気分が違うのか、いつもより長めの挨拶で仲の良さが伺えるものだった.市川家の襲名ということで「睨み」あり.新ちゃん(あーダメだなあ、やっぱり新ちゃんって言ってしまう)に睨まれるのは松竹座の「外郎売」に続き2度目.一段とおめでたい気分になっていいねえ.会場中がワッて盛り上がってお祭り気分絶好調.成田屋の跡継ぎがあの目を持って生まれてきて本当に良かった.

勧進帳

團十郎さんの弁慶に海老蔵の富樫、義経菊五郎さん.團十郎海老蔵での弁慶・富樫ってのはいいね.二人が向かい合って問答やってるだけでワクワクしちゃう.勧進帳は問答あたりは緊張感あっていいんだけど、どうしても弁慶の酔っ払い踊りで眠くなってしまうんだよなあ.海老蔵の富樫は何はともあれ美しい.ほんと美しい.うっとり.3階席だけど花道真上の1列目だったから弁慶の引っ込みもある程度見ることが出来た.やっぱこれを見なくちゃね.

魚屋宗五郎

三津五郎さんの宗五郎はお初です.宗五郎といえば菊五郎さんって即答しちゃうほど菊五郎さんの宗五郎に慣れているので、やっぱりどっか違和感が.三津五郎さんって良くも悪くも落ち着いた真面目っぽさがあるから、江戸っ子のちょっとだらしがない粋な様子がどうしても「演じてる」風に見えちゃうんだな.その点菊五郎さんは酔っ払ってからの芝居とか自然だもん.三津五郎さんは品の良さが仇になってる気がする.どっちかというと芸風が三津五郎さんっぽい菊ちゃんも将来宗五郎をやった時に同じ感想を持ちそうだねえってのが観劇後の妹の感想.うん、それっぽいかな.芝雀さんは普段お姫様の扮装しか印象に無いので、おかみさんの格好だと誰だかわかんないくらい地味だった.