第30回『永倉新八、反乱』

一気にいろんなことが押し寄せてきた新選組です.これからは放送日から1,2日おかないと感想書くのが難しくなりそうだ.
新選組は前回みたいな歴史上の事件より今回のような内部のごたごた劇のほうが数倍おもしろい.あれだけキャラたってる人物揃ってたら他のいれる必要感じないんだもん.
さてさて、あー、土方ファン的には心臓が痛いっす.唯一の理解者が沖田ってとこがなあ.つーか沖田がいてくれて本当に良かった.近藤さんはいまひとつ頼りがなくてな.一人土蔵に入っていく土方の孤独がたまらなかった.かたや近藤達は容保公の前で青春ドラマ繰り広げてるっていうのに、この人は一人で拷問道具を見てんだよ.たまらんじゃないか.
新選組という組織が今現在どれほど規模なのか、そのあたりがはっきり描写されていないから土方の組織編成の話とかに説得力が欠けちゃうんだよ.武田が言う通り「上下の指揮系統の完備が必要」な状態だということが視聴者にもわかれば土方の発案も妥当なものだと思えるだろうし、逆にこの期に及んで「道場仲間で仲良くやろーぜ」なんて言ってる周りのメンバーのほうが甘いってことになるうだろう.が、いかんせんそれが無いからさあ.土方一人が空回りしてる風に見えちゃうんだよね.
見直してみたら、土方と沖田の場面での部屋の調度品やお膳がやけに豪華で、こういうところから今の彼らのステータスが読み取れる.今回の新選組は近藤の一日を軸として描かれているから途中経過が省かれてしまうのが痛い.ナレーション無しでのこの方法は視聴者側の努力が非常に要求されると思う.漫然と見てるとこういう話の本筋の背景となるべきちょっとしたヒントを見逃してしまうんだよなあ.
今回は近藤、土方、永倉、山南とそれぞれの良いところと悪いところがドバッと噴出した回でした.こういう欠点だらけの人だから魅力的、でも悲劇的.

  • 近藤は非を認めたら頭を下げられる潔さを持っている.が、そもそも彼がいつも迷ってるからこんなことが起きるんだよ.土方が無茶言ってると思うならまずお前が止めろ.賛同したなら最後までちゃんとサポートしろ.近藤っていっつも行動起こしてから「これでよかったんだろうか」って言うんだよね.鬼になったんならいい加減振り返るな.とりあえず揉め事を治めることしかしてないから根本的解決には程遠い.
  • 土方は組織編成や報奨金の分け方など組織運営に何が必要か、何をしたら効果的かがちゃんとわかってる.ただそれを実行に移す方法が強引すぎる.直感的にこういう方法がいいって思うこの手のタイプは、結論に至る過程をすっ飛ばすから相手に伝わらない.説明しなくても相手が理解してくれると思うのは大きな間違い.たまには人の意見もちゃんと聞こうよ.自分を疑うことも覚えたほうがいい(でも自分を疑う土方なんてイヤだから今の俺様なままでいいや).そして口調というものは意外と大切なんだよ.同じこと言っても人に反感もたれちゃ意味がない.怒鳴りちらすだけならまだしも紙をビリビリに引き裂いちゃうのはいくらなんでもやり過ぎ.そりゃ周りもひくわなあ.源さんの心配そうな顔を見てごらん.(がしかし、そんな土方を愛いやつめと思って見てたことは内緒でもなんでもない)
  • 永倉は良くも悪くもまっすぐ過ぎて柔軟さが足りない.単なる頑固者になってしまうぞ.そんなことだから斎藤にコロッと騙されちゃうんだ.あー、あと建白書は結局何に一番腹立ってたのかわかんなかったな.鴨暗殺がダメなら原田を外せ.組織編成のことなら近藤は別に強引に押し付けようとはせず一旦ひいてたし.なんだったんだ.
  • 山南、矢面に立つ意思と覚悟がないなら中途半端に関わっちゃいかん.あと昔から悪気は無いんだろうけど一言余計なことを言っちゃうのもこの人の迂闊なところだ.今回もあのメンバーの前で「近藤さんは本当に局長と呼ばれたがってるか」なんて新選組の根幹を揺るがす台詞を言っちゃだめでしょ.山南が「いい人」って感想をちらほら見かけるけど、この人は決していい人じゃないぞー.こういう時に本当にいい人ならいかにまとめるかの方に気を配るはずなのにかえって火に油注いでるからなあ.それに永倉を焚きつけたのなら自分も参加しなきゃ.あれじゃ裏で糸引いてるって言われても弁解できないよ.

つーか、この場合山南は建白書で何をしたかったんだ.永倉たちを引き止めるためだったなら近藤に報告しないのはおかしい.「人数は多いほうがいい」なんて言ってるところを見るとクーデターでも狙ってたのか.あれじゃ近藤の立場がなかろうに(あー、あくまでドラマ内の話です.史実はちゃんとわかってます).葛山が書いてた建白書にはちゃんと「切腹」の文字があったから、「近藤さんが悪いんです.なんとかしてください」程度のものじゃなかったはず.ああいう方法にもってっちゃまずいだろ.あの近藤じゃなかったら完璧に裏切り者扱いされちゃうとこだったよ.
本来近藤の増長に怒ったはずの建白書の扱いを微妙にしたせいか、いろんなところに疑問を感じてしまった.そんな中、原田と斎藤の行動ははすんなり受け入れられるこの不思議.何故だろう.あの2人子供っぽくて可愛いからなあ.
キリキリすることの多かった今回の和みどころは土方と沖田のシーン.ここのやり取りは脚本も2人の演技も上手かった.最初の俳句バカトークが自然と沖田の病気の話に流れていくあたりはさすが.沖田があれだけ隠そうとしてた労咳のことを喋ってしまったのもわかる.土方が本当に沖田のことを大切に思ってるのがわかったし、沖田は一人でも秘密を共有できる人が出来てホッとしただろな.2人が本当の兄弟みたいでほのぼのしつつ切ないシーンだった.
次回以降は山本君自身が台詞見てひいたってくらい土方の鬼モード発動がすごいらしいから、またハラハラしながら見ることになるんだろうなあ.こんなにドラマの登場人物たちの行動に一喜一憂するとは.あれこれ文句言いながらも三谷さんの術中にまんまとはまってる気がする…
鴨暗殺はネタバレ見まくってしまったから山南切腹エピソードに関しては極力ネタバレは見ないことにしてる.土曜スタパの山本副長コーナーだってまだ見てないんだから.