蜷川幸雄演出『お気に召すまま』

会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

【作】W.シェイクスピア
【演出】蜷川幸雄
【出演】
ロザリンド:成宮寛貴
オーランドー:小栗旬
前公爵:吉田綱太郎
タッチストーン:菅野菜保之
ジェイクイズ:高橋洋
シーリア:月川勇気
シルヴィアス:大石継太
ル・ボー、貴族:清家栄一
アミアンズ、貴族:妹尾正文
コリン:飯田邦博
アダム:岡田正
サー・オリヴァー・マーテクスト、貴族:塚本幸男
チャールズ:大富士
フィービー、貴族:山下禎啓
フレデリック公爵:外山誠二
オリヴァー:鈴木豊
貴族:篠原正志
ジェイキス・ド・ボイス、貴族:鍛治直人
デニス、貴族:高山春夫
貴族:田村真
オードリー、貴族:杉浦大介
ウィリアム、貴族:金子岳憲
貴族:加瀬竜美
小姓:秋山拓
小姓:笠原織人

行ってみたら端席とはいえ4列目というかなり前方の席でびっくり.でもって目の前にしょっちゅうロザリンドが隠れに来るから成宮ロザリンドが目の前で堪能できました.普段忘れてるけど、こういうテレビの人気者が出る芝居を見に行くと、芝居じゃなくて人を見に来る客も多いんだということに改めて気づかされる.客席がいつもと違いすぎじゃー.若い女の子が一杯いた.凄いなあ.


えー、『ハムレット』での小栗君の印象が良くなかったのでどうなることかと思いきや、思ったより楽しめました.ちゃんとシェイクスピアのドタバタコメディーっぽい雰囲気もあったし、男だけでやるおもしろさがこの戯曲にはぴったりあっていた.


主役2人は、どう贔屓目に見てもへったくそなの.吉田さんや高橋さんなんかに囲まれてるから余計に台詞回しの稚拙さが耳に付く.特にシェイクスピアなんて言葉遊びが醍醐味みたいなものだから、その回りくどい言葉使いに振り回されて早口になるともう何を言ってるのかさっぱりわからない.何度も「今なんつった?」って眉間にしわが寄ってしまった.


テクニック的には誰がどう見たってダメなのに、なのにすごい魅力的だったのも嘘じゃない.小栗君はハムレットに比べたら上達してた.まだまだ台詞をちゃんと言うのに精一杯ってレベルだけど、舞台が好きで一生懸命なのは伝わってきた.テレビで見るより生で見たほうが全然かっこいいね.同じ人とは思えない.


成宮君は本当に本当に滑舌が悪い.舌ったらずな喋り方だし声を潰してたのかザラザラした声音も聞きやすいとは言えない.1幕目のロザリンドの格好をしてた時はどうなることかと思ったけど、森に入って男装してからはあまりのキュートさに目が離せなくなった.ふとした表情や仕草がとんでもなく可愛いの.こりゃオーランドが骨抜きになっても無理ないわ.テレビで見てる分には不思議な顔立ちとは思えども女の子っぽいとか綺麗だとか思ったことなかったのに、恋に浮かれるふわふわした女の子を演じてる成宮君はありえないほど可憐な女性に見えた.もうほんとにキュート!


例えば藤原君だと周りを固める吉田さんをはじめとするベテラン俳優と同じレベルで語っても、それでもまだ「すげー」って思えるだけのものはある.でもこの2人はとてもとてもそのレベルまで上げちゃいかんだろうって、同じ土俵で語っちゃいかんだろうって自分の中で納得したら、すごく暖かい目で見守ることができた.


主役2人以外は、まあ安心して見られます.吉田さんがあれだけの出番じゃもったいないってくらいか.高橋さんはジェイクイズを飄々と印象深く演じてた.ああいう声のトーンでくるとは思ってなかったので驚いた.この人は見るたびに印象が違うおもしろい役者だ.


コケティッシュな(?)フィービーを演じていた山下さんは歌舞伎風な発声だと思ったら、花組芝居の方でしたか.物凄いメークに物凄いガタイなのになんだか可愛いところが凄い.凄いといえば杉浦大介.オードリーの不細工メークの下の顔に見覚えがあったのも目の錯覚じゃなかったんだ.最前列の人はいい迷惑だろうなー.目のやり場に困るよ.オードリーを見てるとカムカムの藤田記子を思いだした.顔の幅が似てないか?


最後の巨大ふくすけだけは謎だったものの、森のセットや本物の羊登場など奇をてらわない比較的まっとうな演出だと思った.前方だと徐々に薪が燃える匂いが漂ってくるのも臨場感があって良かった.音楽も


蜷川さんの通路を使いまくる演出はこの劇場にぴったりだと思う.コクーンや日生もいいけど、この劇場のステージを包むような客席配置と舞台の奥行き感が好き.こうまで遠くないといいんだけどね.終わったのが10時40分だから、普通に真面目に帰って12時近くになっちゃうんだもん.