野田秀樹『赤鬼』〜日本バージョン〜@シアターコクーン

【作・演出】野田秀樹
【美術・衣裳】日比野克彦
【出演】小西真奈美 大倉孝二[ナイロン100℃] ヨハネス・フラッシュバーガー 野田秀樹

台風のせいか野田さんの芝居だというのにチラホラと空席が目立つ客席だった.もったいないけどこればかりはしょうがないね.


いやー、良かった!想像以上に良かった!
これだったらロンドン版もタイ版も全部見ておきたかったなあ.
登場人物4人でこれだけ濃密な舞台を作れるということにまず驚いた.
なぜか赤鬼を野田さんがやるのだとばかり思ってたので一人外見の違うヨハネス・フラッシュバーガーが赤鬼として登場した時には驚いた.
普通に考えたら日本バージョンなんだから異質な存在を演じるのは外見の異なる外人になるのが当たり前なのにね.


ロンドン版を見たときは野田さん演じる赤鬼の言葉がわかりイギリス人の演じる村人の言葉がわからないから、どちらかといえば赤鬼側の視点で見ていたように思う.だから言葉がわからないだけで何故ここまで忌み嫌われるのか、その理不尽さに「あの女」と同じように憤りを感じた.
ところが、今回は村人が日本人で赤鬼が外国人で、村人の言葉はわかるのに赤鬼はただわけのわからないことを叫んでるようにしか見えない.そうなると村人と同じように赤鬼が得体の知れない何か恐ろしい物として迫ってくる.村人が赤鬼を怖がるのにも一理あるなあって自然に感じていたように思う.それが、途中で赤鬼が「I have a dream」と明らかに英語だとわかる言葉を話しだすと、外見も何も変わっていないのに途端に知性のある人として見えてくるの.
言葉って凄い!そしてそういう言葉の持つ力を180度違う角度から見せる野田さんに脱帽.


終演後はしばらく拍手が鳴り止まなかった.オイルではまったくピンと来なくてカーテンコールの途中で席を立った私ですが、今回は素直に拍手をし続けました.


役者は皆良かった.特に小西真奈美がここまでいいとはねえ.声の使い方、体の使い方が上手いので複数の人物の演じわけがきっちり出来ている.そういう基本を抑えた上で、舞台に立つ上での華がある.安心して話のメインをまかせられる女優だった.『走れメルス』での深津ちゃんとの共演が楽しみだわ.
大倉君はいつもの持ち味を割りと踏襲した演技だった.野田芝居でもこれかってまず驚いた.野田さんと大倉君の身長差が効いてたなあ.「わかんねーよ!」って野田さんの頭を何度はたいていたことか.いやいや、よーく動いてました.
野田さんは弟の役がさすがでした.赤鬼よりこっちんほうが仁なんじゃないかしら.


BSでタイ版放送してくれないかなあ.