髑髏城の七人[アオドクロ]@日生劇場

作:中島かずき 演出:いのうえひでのり
玉ころがしの捨之介/天魔王…市川染五郎
無界屋蘭兵衛……………………池内博之
沙霧………………………………鈴木杏
極楽太夫…………………………高田聖子
裏切り渡京………………………粟根まこと
こぶしの忠馬……………………佐藤アツヒロ
贋鉄斎/服部半蔵………………逆木圭一郎
カンテツ…………………………三宅弘城
狸穴二郎衛門……………………ラサール石井
甚平………………………………村木仁
[関八州荒武者隊]
 うなずき才蔵…………………川原和久
 とどかず大騒…………………タイソン大屋
 さかなで崇助…………………山中崇
 なげやり栄吉…………………安田栄徳
 うっかり杉一…………………杉山圭一
[関東髑髏党]
 鋼の鬼龍丸……………………高杉亘
 乱の剛厳丸……………………小村裕次郎
 刀の非道丸……………………川原正嗣
 無名……………………………前田悟
 無明……………………………村木よし子
 無音……………………………山本カナコ

アカドクロが2時間半、アオドクロは3時間10分、この上演時間の違いが濃密度の違いにも影響したのかしら.
新感線を見た後とは思えないくらいあっさりした気分で劇場を出た.
新感線の芝居は良くも悪くもエネルギー過多の空間を共有できるものなのに、今回はやけに薄味で今まで見た新感線の中では一番一般受けしそうなものだった.
だから文句もないけど熱狂もしない.
のっけから本能寺の変の映像を挟み込むなどアカに比べて背景やストーリーを説明するシーンが付け足されていて、これなら始めて見る人にもわかりやすかったんじゃないかしら.
歌あり踊りあり、次から次へと役者が花道を駆け抜け衣装もカラフルでセットも豪華、これぞ新感線という芝居だったのにこの物足りなさはなんだろう.
そう思うとアカドクロって罪深い.余計なものをそぎ落とし渋さを狙ったいのうえ演出が実はすごいかっこいいってことを客も知っちゃったからなあ.
アオドクロは素直に笑えるシーンはたくさんなったものの、グッと心臓つかまれるような切なさを感じることがなく幕が下りてしまった.あれれ?
何度か「おお、かっこいい!」って鳥肌モノの場面はいくつもあったけど、泣きたいくらいに感情を揺さぶられることがなかったのはやっぱり不満だな.だって他の芝居ならいざ知らず髑髏城だもん.そこ、重要でしょう.
音楽の違いも大きかった.アカドクロのメインテーマは泣ける.
七人がスローモーションで移動し一列に並ぶシーンなんてアカドクロでは毎回心臓掴まれて大変だったのに、今回は「あ、アツヒロ君、三宅さんにぶつかっちゃうよ!」なんて冷静に観察しながら見てしまった.
七人が七人である絆のようなものが薄かったように思う.この七人でなければならない必然性があまり感じられなかった.三宅さん自身は凄くおもしろくて大好きだったけど、やはり捨之介との関係を考えると贋鉄斎であって欲しかったなあ.
極楽太夫も忠馬も個々としてはキャラ立ちしてて良かったと思う.ただ個としてのキャラが立ちすぎて仲間を失った悲しみがいまいち伝わってこなかった.関八州はこれまで兵庫のみに焦点当てていればよかったものが、今回川原さんのキャラの分を描かなくてはいけなかったので逆に忠馬の仲間内での立ち位置描写が弱くなってしまったような気がする.聖子さんの極楽は、仲間と一緒にというよりは一人で生き抜いてきたって風だった.
アカドクロでは捨之介た求心力になっていたように見えたけど、今回は捨之介はきっかけにしか過ぎず、各々自分のためにやってるって風に見えちゃった.ある意味高田さんと粟根さんという2人の新感線古株の放つオーラが凄すぎた.この2人がまとめてるように見えちゃうから、ストーリーとしてはなんだか違う方向にいってしまってた.
池内蘭兵衛は見た目はすごく綺麗なのに色気が圧倒的に足りない.天魔の媚薬シーンもポケーッと見ちゃった.なんであんなにハンサムなのに色気がないんだろう.立ち回りも水野美紀ちゃんのほうが圧倒的に上手いってのもなあ.蘭兵衛の後ろにしょった業が全然見えなかったから、最後に捨之介が蘭兵衛にかける台詞が上滑りしてしょうがない.初舞台とはいえ舞台的発声は出来てたように思う.あの妙なお店の女将さんのような口調はいのうえさんの演出だと思いたい.
染はさすがに色気はあるんだよね.でもまだいまいち乗り切れてないのかなって動きだった.アテルイのラストあたりは凄かったからさ、やっぱりそれ以上のものを期待しちゃうんだよね.天魔王と捨之介の違いも髪型くらいでしかわかんなかった.近くで見たらまた違うものなのかしら.うーん、ごめんなさい、私はやっぱり古田さんの捨之介が好きです.あ、でも台詞は圧倒的に染のほうが聞きやすいしわかりやすかった.
アツヒロ君は凄く頑張ってた.良かった.じゅんさんの持ちキャラってのはかなり大変だと思うけど、兄貴キャラなのに実は可愛がられている弟キャラという仕上がりになっていてアツヒロ君らしさがよく出ていた.
アカの古田さん、じゅんさんにも感心したけど今回も高田さん、粟根さんの濃さに驚いた.特に粟根さんはここのところ古株劇団員に囲まれいまいち目立っていなかったけど、今回ああいうメンツに入ると十分以上に濃かった.そして見せ場はきっちりもっていく.そろばん殺陣を出してくれたのはいのうえさんのファンサービスですよね.サングラスとってもメガネしてたのには笑った.
村木仁の甚平、良かったです.
よしこさんとカナコさんのデュエットはかっこいい.


今日はこぶ平を見かけました.