マダム・メルヴィル@スフィアメックス

作:リチャード・ネルソン
演出:鈴木裕美
美術:松井るみ
マダム・メルヴィル 石田ゆり子
カール       成宮寛貴
ルース       村岡希美
カールの父     五森大輔
<あらすじ>1966年、パリ。アパートの一室。文学教師マダムメルヴィルのクラスに新しい生徒--父の仕事の都合でアメリカからパリへ移り住んだ15歳の少年カール--が入ってくる。パリの空気や友人に馴染めず、どこか孤立した雰囲気を持つカールに美しく聡明なメルヴィルは好意にも似た関心を抱く。彼女がまだ学生だった頃、美術教師と恋に落ちた自らの経験をカールに重ね合わせた。メルヴィルは文学や芸術、愛についてカールに語り、彼もそんな彼女に応えるように知性の目を開いていく。どちらから望んだことなのか、偶然か、一夜をともにする二人。教師としての立場や思うようにいかない現実の恋愛。思春期の彼を慈しむ想いと、愛と性とセックス。一晩と一日という短い時間の中で二人が共有し、経験したすべてが、そのアパートの一室にあった。

 e+で追加券が出てたので当日受け取り扱いで急遽行ってきました.追加席なのでどんなクソ席かと覚悟して行ってみたら、端も端でしたが前から3列目、今回のセットだと端でもそれほど見切れることはなくむしろ間近で見られるラッキーな席が用意されてました.


会場着いた途端鈴木裕美が目に入って初めて演出が彼女だということに気づいた.いかに慌てて取ったかわかるってもんだ.成宮君に石田ゆりこと面白そうな組み合わせだったけどチラシのあらすじでは興味がもてそうもなかったのでチケット参戦しませんでした.でもね、開演後に聴こえてくる評判の良さにこれはちょっと見ておかないとって気分になったところにタイミングよくe+からメールが来るもんだからポチッと申し込みボタンを押してしまいました.


内容的に表情が見られた方が楽しめる芝居だったので前方席でよかったです.国語の教師マダム・メルヴィル(クローディー)と彼女に誘惑される15歳の男の子カールの話.成宮君が15歳に見えるかどうかはおいておいて、いたいけな少年の雰囲気がぴったりだった.クローディもこの子だったらそりゃ構いたくなるよ.年上の女性の言うことに素直に一喜一憂するカールがあまりに可愛くて、まだほんの子供のこんな無垢な男の子をからかっちゃダメだよーって保護者の気持ちになって見守ってしまった.不倫相手と喧嘩して自暴自棄になってるクローディーが側に誰かに居て欲しかった気持ちもわかる.でもそれに15歳の男の子を使っちゃいかんよ.荷が重過ぎる.でもカールが将来作家になる道を選べたのは彼女との出会いが大きく影響しているのも明らかで、そう思うと思春期の男の子にはこういう経験も必要なんだろうなって納得したわ.それにカールから見たら大人の女性のクローディーも、同年代のルースとのやりとり見てるとまだまだ自分のことで精一杯の子供なんだもの.

第1幕のクローディーとカールとの会話はとにかくおもしろい.小粋な会話のキャッチボールってのはこんなのを言うんですかね.映画の話、音楽の話、美術の話、ボナールや魔笛など実際の絵や音が浮かんでくる活き活きとした会話でオリジナルの脚本をオリジナル言語で読みたくなりました.これフランス語なのかなあ.英語なのかなあ.

成宮君は蜷川さんのような古典芝居よりこういう普通の男の子のほうが安心して見ていられる.滑舌の悪さはもうしょうがないのかな.普通の会話だと大丈夫なのに客席に語りかけるモノローグでは致命的.でも15歳の一生懸命な男の子がちゃんとそこにいました.このままいけば、そしてもう少し滑舌をなんとかすれば結構いい舞台役者になるんじゃないでしょうか.楽しみです.

石田ゆり子の持つ色っぽさって清純派の色っぽさだよね.どんなにはすっぱな態度や仕草をしてみても清潔なままなの.だからなのかクローディーってどういう女性なのかいまいち理解できなかった.急に誘ってみたり怒り出したりはしゃぎだしたりしても、それが彼女の持つパーソナリティにぴたっとはまらなくてずっとアンバランスさを感じてしまった.でもそのアンバランスさこそがクローディーという女性そのものなのかもしれない.んー、やっぱり私には彼女はカールを惑わす女性教師というより、実はカールよりももっと孤独な子供であるように見えたな.

村岡さんはさすがです.もう何から何まで安心してみていられました.特にカールをからかう様子が本当に上手い.2人がじゃれあってる様子の可愛さったらなかった.村岡さんはとにかく声がいい.あの声大好き.


今回一番気に入ったのは実はセット.松井るみさんの美術だったんだ.芝居見ながら模様替えがしたくなったくらいセンスの良いインテリアだった.白い壁に壁一面の本棚とか憧れちゃう.