蜷川幸雄演出『ロミオとジュリエット』

作:W.シェイクスピア
演出:蜷川幸雄
藤原竜也:ロミオ
鈴木杏:ジュリエット
壤晴彦:キャピュレット
瑳川哲朗:僧ロレンス
立石凉子:キャピュレット夫人
梅沢昌代:乳母
藤井びん:薬屋
高橋洋:マキューシオ
妹尾正文:モンタギュー
スズキマリ:モンタギュー夫人
横田栄司:ティボルト
月川勇気:パリス  他

『KITCHEN』本チラと『メディア』『近代能楽集』の仮チラあり.全部見たい.
今日は小栗旬くんが見にきてた.
じーっと見られたのは大口開けた顔を上向けてドーナッツを食べてたからだろうか……


観劇後はミクニカフェでayaちゃんと『ロミオとジュリエット』という作品の持つ意味と自分との関わりといった比較的真面目な作品論&人生論を語り合ったり.シェイクスピアはおもしろい.


【追記】
センターから見たかったー!
今回3列目とはいえ端席だったので見えない芝居が一杯あった.下手の通路でのロミオとジュリエットのいちゃつきシーンなんて全然見えないよぅ.
舞踏会もロミオが見切れてしまい、ジュリエットに一目ぼれする演技が見られませんでした.見せ場なのに.
まあ、それでも目の前で見た藤原君が物凄く可愛かったので良しとします.


蜷川さんの芝居は出演者というよりはむしろ蜷川演出を目当てに行きます.ある意味オーソドックスな蜷川テイスト演出が好きなんです.ただ、藤原君主演となると話は別.私の中のお目当て比重が途端に藤原達也>蜷川演出となってしまいます.そのくらい藤原君の演技が見たい.


で、今回のロミオですが、正しい意味での役不足かなあって.ハムレットを見た後のロミオでは既に物足りなさを感じてしまった.前半部分の無邪気に友達と戯れジュリエットの愛に全身で喜びを表現する青年ロミオの演技がとても新鮮だった.本人もパンフレットで語っていたが、こういう役柄を演じるのは初めてでかえって難しかったそうだ.でも藤原君のこの手の演技は計算無しで全ての観客に微笑ましさと愛らしさをアピールできるものがあると思う.個人的には後半の重苦しいハムレット的な演技よりも前半の軽やかな演技のほうが見ごたえがあった.今度は全編コメディーのシェイクスピアに挑戦してほしい.絶対に似合うと思う.


杏ちゃんのジュリエットはとにかく元気!!元気一杯!ロミオを知る前の少女の表現も元気だけれど、悲嘆にくれる時ですらひたすら元気.エネルギー有り余ってるな〜って感心した.
ayaちゃんも同じことを思ったらしいけれど、もう10代が果てしなく遠い日々となってしまったこの歳でああいう嘆き方を見ると「ジュリエット、いい加減うるさい」って思っちゃうの.そこまで泣くか?喚くか?ってそのエネルギーにびっくりする.たった5日で恋に落ち死を選ぶという行動に説得力をもたせるにはあのくらいのパワーがないとダメなんだな.杏ちゃんは嘆きの表現が全て「アァー」って泣き声なのでじきに飽きてきちゃいました.もう少し工夫が欲しかったな.
私が比較対象として思い浮かべるロミジュリは演劇よりもバレエになる.バレエではお転婆な女の子という一面よりお嬢様な一面のほうがより強く演出されているので、こういうジュリエットで来るとは思っていなかった.


バルコニーシーンはとにかく2人とも可愛らしい.あの8Mの高さがあるというセットを身軽に行ったり来たりしていて、単純にその体力に感服しました.恋をして浮き足立った気分がセットを上下する動きの視覚的効果と共に伝わってきた.それから、藤原君が観客に話し掛けるように台詞を言うシーンは思わず客も笑ってしまったくらい間の取り方が上手かった.あとでパンフを見たら、あれは蜷川さんがロンドンでのハムレット演出の手法を取り入れたらしい.ああいう藤原君の芝居はもっと見てみたい.


後半は重い.重くて激しい.
早朝ベッドのシーンははもっと叙情的にしっとり見せるのかと思ったら、二人ともまるでギリシャ悲劇のように感情目一杯放出している演技でものすっごく暑苦しかった.
墓場のシーンも私の中での比較対象はやっぱりバレエで、とりわけマラーホフのロミオに置き換えてしまった.バレエだと当然台詞がないので動きだけで嘆きを表現することになるのだけれど、その動きの表現だけで泣けてくるの.
が、今回そこに台詞が入るという通常の芝居の手法で提示されたというのに全然泣けもせず悲しくもならなかった.悲嘆にくれる感情的な台詞が続き、かつこれでもかと激しい感情表現で見せてくれているのに、やけにあっさりしてるなーなどと思ってしまった.シェイクスピアで言葉が余計に感じるなんて.
私の席からはずっと2人の後姿を眺めるしかなく、表情を確認することが出来なかったというのも大きい.だから言葉だけが響いてきて余計に感じてしまったんだと思う.
それと共に、ロミジュリの世界に共感できるような、あの若くして逝った恋人たちを愛しく思えるような、そういう気持ちがもはやどこを探っても私の中にはなかった.何故彼らは死を選んだのか、何故他の道を模索しなかったのか、観劇後は一緒に見たayaちゃんと「イギリス人の考えるイタリア人像とその情熱への憧れ」「小国乱立状態のイタリアの情況」「金と権力を持った若年未就労者の問題」などなどいろいろな角度から考えてしまった.


高橋洋のマキューシオが良かった.素敵だったわー.
前回のホレイショーとは正反対の役を大変魅力的に演じてらっしゃいました.マキューシオってマッチョなお調子者というイメージだったけれど、こういうタイプで来ましたか.
月川パリスもおもしろいアプローチでした.こんなパリス見たことない.「愛しいオフィーリア」って台詞がこんなに似合わないパリスがあっただろうか.愛しいも何もまるでロボットのようにどんな感情も無さそうなパリスだった.


相変わらず衣装が素敵でした.特にモンタギュー側とキャピュレット側の若者たちのちょっとパンクが入った衣装が可愛い.ただロミオの原色緑のTシャツだけは謎のまま.なぜあの色なんだろう.白Tに変わってホッとした.