KITCHEN@シアターコクーン

作:アーノルド・ウェスカー 改訳:小田島雄志 演出:蜷川幸雄
成宮寛貴 勝地涼 高橋洋 須賀貴匡(ディミトリ) 長谷川博己(新人コック) 杉田かおる 品川徹(オーナー) 大石継太(菓子担当) 鴻上尚史 津嘉山正種 妹尾正文 山口詩史 戸井田稔 鈴木豊 宮田幸輝(じゃがいもむき) 片瀬左知子 大川浩樹(ガストン) 原田琢磨(スープ担当) 月川勇気 他

入り口で蜷川芝居、というよりはシェイクスピア物でお馴染みの吉田綱太郎氏をおみかけしました.


休憩時間に外に出てドゥ・マゴを上からぼけーっと眺めつつふと横を見たら、あら、そこにいらっしゃるのは伊東甲子太郎センセじゃございませんか?
そう、谷原章介氏がお連れの方と談笑中でした.
黒ぶちメガネをかけた非常にカジュアルでお洒落ないでたちだったので一瞬わからなかった.
帰り際舞台裏側座席からの出口正面にもまた谷原さんの姿が.そこ女性トイレ待ち行列の真横にあたるので待ち合わせには向かない場所だと思うのですがいいんでしょうか。


えーっと、見かけた有名人はおいといて、感想書けるかなあ.
最前列はセットで舞台が見えません.凝ったセットもいいけれどああまで死角がありすぎるのも問題じゃないですか.
何が起こってるのかがわからない.肝心なところが見えないことに慣れなくて1幕はかなり辛かった.
後方列で見てたらもっと楽しめただろうなあ.


とりあえずミーハー的な印象だけ.
デミトリィ役の役者さんが好みだわ〜ってうっとりしたので帰ってコクーンオフィシャルで調べてみた.
この人が須賀貴匡なのか!!全然写真とちゃうやん!
いつもの雰囲気は全然知らないからわからないけど、舞台の時はもっと地味〜で薄い雰囲気で良かったんだよ.
この写真だとまったくどこにもひっかるものがない.一般的にはこの写真のほうが受けがいいに違いない.


【追記】
うーむ……
そもそも脚本自体が好きではない.そしてそれを日本人キャストでやることの難しさを感じた.


ドイツ人であること、アイルランド人であること、キプロス人であること、イギリスで働くことにおいてそういった人種の違い、またイギリス人同士の階級問題がどう影響するのか、彼らの地位がイギリスの中でどうランク付けされているのか、そこがわからないから何故あれほど人種間で対立してるのかがしっくりこない.人種の違いのせいなのか、それとも単に性格の問題なのか、そこのところもよくわからない.
検索してみるとアーノルド・ウェスカーという劇作家はピンターやベケットあたりと並んで紹介されていた.「怒れる若者たち」というキーワードを知っていたらもう少し心の準備が出来たのに.


舞台の向こうにも客席を作り、ちょうど舞台が客席ではさまれる作りになっていた.
舞台上には厨房が再現されていたけれど、これが視界をさえぎりまくってくれて「ああ、あのまな板さえなければ!あの鍋さえなければ」とフラストレーションがたまった.
見事にまな板でパティシエ2人が隠れました.鍋で成宮君が隠れました.鴻上さんなんてどこにいたものやら.
担当料理ごとに場所が決まってるので、役者の基本的立ち居地がずっと変わらないのも辛い.つまり一度見えないってことはずっと見えないってことなの.おかげでお目当ての一人である高橋さんの台詞なんて顔を見ながら聞けたほうが少ないくらいだった.
最後手を血に染めた成宮君に向かいコック長が激怒しているシーンでも、肝心の成宮君がまったく見えないのでどんな表情でこの台詞を聴いているのかが気になってしょうがなかった.怒っていたのか、笑顔なのか、呆然としてるのか、この時のリアクションで台詞の意味が違ってくるでしょう?そこが見えないもんだから、もうさあ、最後の最後でどうでもよくなってしまった.
このシーンが最たるものとはいえ、前編にわたってこういうことが起こり続けるというのも興を削ぐものですよ.こうまで見えない場所は売らないでほしい.


2幕目はまだしも1幕目は見切れるということだけではなく舞台上のドタバタにも取り残されて本当に辛かった.というか一瞬寝かけたくらい舞台に注意が向かなかった.1幕ラストなんて何が起こってるのかさっぱりわからなくて、半分このまま帰ろうかと思ったくらいだった.
2幕目は比較的静かに始まってくれたのでなんとか自分を取り戻すことが出来た.


主役の成宮君はというと、滑舌もだいぶましになってきてるし確実に前回よりは成長してるとは思った.ただ彼は狂気というものが似合わない役者だと思っているので、今回の役より明らかに『お気に召すまま』や『マダム・メルヴィル』のようなコケティッシュな役のほうが魅力的に映った.


高橋さんの淡々とした雰囲気はいいね〜.あと長谷川さんだっけ?新人コックの人も良かった.勝地涼くんは目の前でずっとステーキ焼いてました.あどけない雰囲気が可愛かった.
杉田かおるは貫禄勝ち.個人的に一番すごいと思ったのは、開演前から休憩中もずーっと舞台の端っこで知能障害者役でじゃがいもをむき続けた宮田幸輝.あと個人的に一番好みだったのは工学オタクのディミトリ役須賀貴匡.薄い顔がいい.


絶望的にダメな人がいるわけでもないのに、どうにもバラバラな印象を受けたのはなんでだろう.単に人が多すぎて私の頭では処理しきれなかっただけかしら.