パルコ・プロデュース『メアリー・スチュアート』

PARCO劇場
フリードリッヒ・シラー作「メアリー・スチュアート」の自由な翻案
作:ダーチャ・マライーニ 訳:望月紀子 演出:宮本亜門
出演:原田美枝子 南果歩

言葉と肉体が印象に深い舞台でした.
2つの椅子と赤いペンキが暴力的に塗りたくられた金属の壁という荒涼な舞台の上で、2人の女優が時代を超えて2人の女王の戦いを繰り広げいた.たまに入る音響以外ほぼ静寂の中、台詞のみで進む非常に緊張感と集中力を強いられる舞台だったものの、その緊張を心地よく楽しむことが出来た.
この舞台に興味を持った理由はほぼ100%戯曲で、エリザベス一世メアリー・スチュアートがどう描かれているのかを楽しみにしていた.
ロンドン塔に幽閉中のメアリーを演じる南果歩とその召使の原田美枝子、結婚問題に揺れるエリザベスを演じる原田美枝子とその召使の南果歩という2組の女王&召使ペアが交互に登場する.イギリスのあの時代に疎い人にもわかりやすいように、1幕目はお互いの関係や状況を上手く盛り込んでいた.ただその分単調になりがちだったのが、2幕目はメアリの処刑問題がクローズアップされてくるにつれて2人のより個人的な関係に焦点が当たってきた目が離せなかった.女性でありかつ絶対君主であるという稀有な状態を共有する2人の女王がそれぞれ異なる考え方やアプローチをしているところが非常に面白かった.この戯曲で見る限り、多分女性であること、女性に求められることに疑問も持たず、それ故に女性として魅力的で女性として強く生きていたのがメアリーで、エリザベスは女性であることより君主であることを選択したがために女性であることへの疑問や悩みを常に抱えていたように思う.そして私はやはりエリザベスが好きだと再確認.
2幕のエリザベスの演説には思わず聴衆の一人になった気分で感動してた.
どちらの女優もとても素敵な女王を演じてました.役者たるもの台詞を覚えて当たり前だと思っている私ですら、あの膨大な台詞量には驚いた.素晴らしい.