ケラマップ『労働者M』@シアターコクーン

【作・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ
堤真一 小泉今日子 松尾スズキ 秋山菜津子 犬山イヌコ 田中哲司 明星真由美 貫地谷しほり 池田鉄洋 今奈良孝行 篠塚祥司 山崎一

相変わらずの3時間越えだったけど、全然長く感じなかった。特に前半2時間があっという間だった。
先週見た同じくらい長い『桜飛沫』よりこっちのほうが好き。
とはいえ、SF風味の入ったケラ作品は相変わらず何なんだかよくわからない。誰が主人公というわけでもなく、登場人物の誰もがその人なりのPolicyで生活を営んでる、その統一感の無さが心地よくもあり、わからなさの元でもある。誰か一人にフォーカスすることを許してくれないので、よほど注意して見るなり共感できる人がいるなりしないと、そこで起こっている出来事をへーっつって眺めて終わりになってしまう。
私にとってのケラ作品は、毎回誰にもシンパシーを感じることもなく、誰にも心を動かされることがなく、作り物という意味での「物語」「芝居」に等しい。こういう世界もあるのだなーって自分とは接点のない場所を覗いてるに近い(あ、カメレオンズリップはそういう意味ではちょっと違ったな)。感動して涙するとか、怒りに震えるとか、そういう感情を揺さぶられることはないのだけれど、世の中には面白いことを考える人もいるもんだって、興味津々で見ることができる、そんな作品。
自殺やノイローゼ、暴力や革命や土星人とイタい素材は山盛りなのに、漂う軽さとポップさと無機質さがケラカラーなんだろうな。


OPの映像はいつも通り。オーケンの歌がツボ。
今回は映像を使った照明効果(?)が効果的だった。特にインクの染みは映画みたいでいいね。


役者陣は安心の安定感。中でも松尾さん、キョンキョン、イヌコさん、田中哲史は出てくるとつい目で追ってしまった。
冒頭で既に明らかにひとり違うテイストのダンスをする披露する松尾さんがいた。松尾さんに比べれば池鉄のぬめっぽさはまだまだ全然薄かった。
記者役イヌコさんと田中哲史のやりとり最高。キョンキョンははすっぱな事務員も、高圧的な指導者もどちらも魅力的だった。
堤さん、秋山さん、山崎さんと、クォリティの高い役者が揃ってるので芝居が壊れない。


噂どおり今日も業界人が多い客席でした。
岩松了荒川良々千葉雅子が並んで座って仲良さげに喋っていて、その後ろに長塚圭史、横を見ると小林薫余貴美子がいた。ほかにも明らかに見たことのある人がちらほら。