朧の森に棲む鬼@新橋演舞場

面白かったー。かずきさんのいのうえ歌舞伎物はこうじゃなきゃ。四天王の名前をもじってるとことか、いかにもかずきさんらしい脚本でニヤッとしちゃった。
舌先三寸でのしあがる悪役といい3人の魔女との契約といいリチャード三世とマクベスとを混ぜて日本版に焼きなおしたという印象のストーリーだね。
染が悪役ってこと以外なんにも知らなかったのが良かった。『吉原御免状』や『メタルマクベス』の場合、原作をどう料理するかというポイントで見てしまう部分もあったけど今回はストーリーがどう進むのかドキドキしながら見守るという正しい観劇態度で臨むことが出来た。
相変わらず謎なポイントがあったものの(魔女の目的は?魔女と3人の女性がそっくりだった意味は?)、ライの運命の明暗が嘘がまことだったことを契機に切り替わったのがはっきりわかって良かった。
いのうえ歌舞伎には、かっこよい立ち回りがあって、かっこよい男達と女達がいて、最後にカタルシスがあれば満足です。そんなわけで、ここ最近だとアテルイ、アカドクロに続くヒットでした。


オープニングの鳥肌物のかっこよさで掴みはOK。多数のドクロが光る滝の中にタイトルが浮かび上がるその演出のクールなことときたら!
今回ストーリーはもちろん、いのうえ演出の上手さに唸るところが多々あった。この間同じ場所でG2演出見たのが大きい。比較対象が出来たことで、いかにいのうえさんが花道や幕、特殊効果を上手く使っているのかがわかった。
客を飽きさせず次から次へと息つく間もなく物語が展開し、しかもそれが煩くない。ああ見えて凄く洗練されているのだなあーと改めていのうえさんの才能に惚れ直した。


染が徹頭徹尾な悪役で、これでサダヲちゃんが死んでたら個人的に後味悪くてヤダって思ったはずだけど、そうじゃなかったから全部OK。そのくらいサダヲちゃんが可愛くて可愛くてたまんなかった。
ライの他の人への対応は納得した。そこまでするかと思いつつも納得した。でもキンタを利用したとこだけは頭では理解したものの、気持ち的に不快になった。だってえ、あれじゃキンタが可哀想過ぎるんだもん。キンタだけは傷つけないでほしかったわ。


3人の女性、特に聖子さんと秋山さんが対照的ながらも互角に描かれてたのが良かった。どちらも芯のしっかりした強い女優なので見ごたえたっぷり。
なんといっても2人ともうっとりするほどカッコイイ!いのうえ歌舞伎ではまず何よりもかっこよくなきゃダメでしょ!


古田さんのマタギも素敵。他の登場人物たちが言葉で操るライの土俵に立ってしまっているのと違い、最低限のことしか喋らずじっと観察してる様が異質で印象的だった。
最後切られても刺されても血が吹き出てもちっとも倒れない古田さんに「なんたる生命力」と感心することしきり。普通だったらありえねーってなるところが「あるかもね」と説得されてしまうのが古田さんの古田さんたる所以だ。


今回はセットもさることながら衣装がどれもこれも好きだった。いつもよりシンプルなデザインだけど色使いが絶妙でキャラの特徴が色や素材で表現されていた。