ひばり@シアターコクーン

【作】ジャン・アヌイ 【演出】蜷川幸雄
松たか子 橋本さとし 山崎一 磯部勉 小島聖 月影瞳 二瓶鮫一 塾一久 久富惟晴 稲葉良子 阪上和子 横田栄司 妹尾正文 飯田邦博 堀文明 山本真嗣 品川徹 壤晴彦 益岡徹 他

凄く良かった.久しぶりに感情が揺さぶられ舞台終了後に今見た芝居のことで頭が一杯になった.
法廷がベースになり基本的に人を言葉で動かしていく話で、レトリックが好きな人にはたまらないと思う.言葉の応酬にいつの間にか引き込まれていた.その言葉をきっちり届けてくれる役者揃いだったのも良かった.
キリスト教徒ではないし信仰ということが身近にないのでこの脚本の本質的なところは実は良くわからない.異端審問官は何を恐れ何を願っているのか、司教の言う神に委ねるとはどういうことか、ジャンヌの聞いた神の言葉自体が許されないことなのか、ジャンヌの何がそれほど凶弾されねばならぬことなのかが聞いてるうちにどんどんわからなくなってしまった.それでも人間とは何か、神とは何か、生きるとは何か、自分とは何かということをストレートに訴えかけてくる芝居で3時間があっという間だった.
宗教観に凝り固まった聖職者達と、シャルルやウォーリック伯爵といったいわゆる政治家達の合理的かつ狡猾な生き方の間で翻弄されるジャンヌの純粋さが痛々しくもあり神々しくもあった.個人的にはさとしさん演じたところのウォーリック伯爵に一番共感できた.あの生き方あの考え方なら自分でもわかる.でも結局は最後のジャンヌの「こんなのジャンヌじゃない!」という叫びにやられてしまった.松たか子、あまり得意ではないのだけれど奇跡の少女を素晴らしく演じきっていた.