阿佐ヶ谷スパイダース『みつばち』@スペースゼロ

作・演出:長塚圭史
山内圭哉(Piper) 伊勢志摩(大人計画市川しんぺー猫のホテル) 鈴木砂羽 中村まこと猫のホテル) 中山祐一朗 大林勝(JAC) 新井友香Highleg Jesus) 佐藤真弓(猫のホテル) 桑原裕子 小山田サユリ 富岡晃一郎 長塚圭史 伊達暁 横山一敏(JAC

蜘蛛の巣にかかった大きな蜜蜂の絵が印象的な幕がかかっていた.
相変わらず暗い話だったけど、時代劇という日常から乖離した設定で包まれていたせいかそれほど悲惨な印象も受けず観劇後の気分も良かった.

山内さんの坊主以外の姿というのは初めて見た.浪人姿が色っぽく、さすが二枚目はなんでも似合うのねと感心した.鈴木砂羽との美男美女カップルとそれを取り巻く役者と良いコントラストが出ててかなり力の入った大作といった印象を受けた.

原因のわからぬ伝染病が蔓延したせいで隔離されてしまった島の中で、病気をうつされていない人たちだけが屏の中で寄り添って生活している、そんなところへ浪人とその書生(?)が流れ着き、それまでの生活が狂っていき……


ところどころ腑に落ちない点はあったものの、そこに登場する人物がそれぞれ異なる信念で必死に生きていて、その必死さや生への執念、あるいは諦念が悲劇を生んでいく様子が予想外にきれいにまとめられてたように思う.長塚脚本だからもっとドロドロいくのかと思ってた.

それにしても猫のホテルの役者陣はみんな上手いねえ〜.びっくりした.本公演を映像で見た時にはさっぱり魅力がわからなかったけど、まさかこういう渋い演技が光るとは.3人が要所要所できっちり締めていたのはさすがだ.

【過去日記から】
夜はスペースゼロにて阿佐ヶ谷スパイダース『みつばち』を見る.いのうえひでのり氏が見にきてた.こんな私ですら劇場遭遇率が高いってことは、相当芝居を見に行ってるってことよね.

阿佐スパ初の時代劇らしい.そしてわたしにとっては初の生阿佐スパ.映像で見た今までの作品はどれも救いのないドロドロしたものだったし、『マイ・ロックンロース・スター』も重い作品だったので、きっと今回も後味の悪さを抱えたまま帰ることになるんだろうなあって覚悟して行った.が、あれ?今回は比較的毒薄め?相変わらず人はばんばん死ぬし、不幸の積み重ねでやり切れない話ではあったけど、嫌な気分にはならなかった.山内さんの二枚目なのにとぼけた雰囲気が軽みを与えてたし、猫のホテル市川しんぺー中村まことが両極端な役柄をそりゃもう驚くほど上手く演じてたし、伊勢志摩はかっこいいし、まさに適材適所なキャスティング.休憩なし2時間半という長丁場が気にならなかった.『ライヒ』にしても『ポルノ』にしても長塚圭史の世界ってよくわからなくてボーっとしちゃったけど、今回は単純におもしろかった.共感はしないけどね..