高橋克彦『だましゑ歌麿』

だましゑ歌麿

だましゑ歌麿

松平定信寛政の改革当時、歌麿の妻が大水のどさくさにまぎれて殺された.偶然関わった南町奉行所の仙波が調査を進めると意外な黒幕が…
図書館本.高橋克彦のライフワークとも言える浮世絵をミステリーに絡めたお得意の作品.歌麿が押し込み強盗してました!北斎が同心の密偵してました!いやあ、楽しいなあ.北斎スパイ説は北斎を扱った作品でも披露してたけど、実際にやってるところを書いちゃうってのは作家だからこその技だね.
火付盗賊改の長谷川平蔵が敵役になっててびっくり.吉右衛門さんのあの平蔵が悪者です.まあ、最後は老中定信と共に自分の信念に忠実なだけっていう設定で悪役では終わらなかったわけだけど.
浮世絵好きならニヤリとするエピソードが上手く謎解きに絡めてあって、本筋とは違うところでも楽しめる.もちろん浮世絵に興味がなくても二転三転して転がっていくストーリー展開で十分楽しめる.同じ作者の浮世絵殺人事件シリーズは研究者の悲哀が盛り込まれててどことなく物悲しいトーンが漂うんだけど、これは時代物なせいか爽快なヒーロー物っぽい印象の作品だった.