六月大歌舞伎 海老蔵襲名@歌舞伎座

昼の部を2等、夜の部を3等と通しで観劇.『寺子屋』が見たかったから昼の部を2等にしたけど、素直に『助六』の夜の部を2等にしておけばよかったかと少し後悔した.海老蔵玉三郎の2人が揃うとこの世のものとは思えない美しさでした.うっとり〜

【昼の部】
一、外郎売
 外郎売松緑團十郎代役)
 大磯の虎:芝雀
 舞鶴亀治郎
 化粧坂少将:七之助
 朝比奈:権十郎
 工藤左衛門祐経:段四郎

二、菅原伝授手習鑑 寺子屋
 松王丸:仁左衛門
 源蔵:勘九郎
 戸浪:福助
 春藤玄蕃:彦三郎
 園生の前:秀太郎
 千代:玉三郎

三、十一代目市川海老蔵 襲名披露 口上 
 新之助改め海老蔵、他幹部俳優出演

四、春興鏡獅子
 小姓弥生 後に獅子の精:海老蔵

た列真ん中寄りの席だったので花道ばっちり.夜の部もこのあたりを狙うべきだったか<そんな余裕は無い

團十郎さんの代役が松緑.この人は声がねえ、苦手なんだなあ.あの早口の台詞はちゃんと聞き取れるんだけど、舌が長いのかすっきりした感じじゃないの.でも思ったより外郎売の衣装が似合ってた.前に見たのが新之助@お正月の松竹座だったから、訳もなくおめでたい気分になった.

泣けました.仁左さんの松王丸が良い.玉さんの千代も良かった.それまで「泣くでない」を千代を諌めたりグッと感情を押し殺してた松王丸が桜丸を思い出して泣く場面でうるっときた.玉さんの硬質な雰囲気は武家の奥様をやるのにぴったり.寺入りからあったほうがより悲劇性が増すと思うのに今回はなくて残念.寺入りないと玉さんちっとも出てこないし.松王丸は黒地の衣装.ねずみ色の時が音羽屋型だったか?この違いは役者の家系で決まるのか、それとも好みで決まるのかよくわからん.中村屋の夫婦は最初は「どうなのよ、これ!」ってちょっと腹立たしかったけど、後半はまあまあ.私はやっぱり勘九郎が苦手らしい.勘九郎というより勘九郎に対した時の客の反応が嫌い.寺子屋の源蔵で笑えるシーンなんてないでしょ.例えば吉右衛門さんとかが言ったら絶対笑わない台詞でも、勘九郎だと「これおもしろいこと言ったのかな?」って探るような笑いがくるのが凄くイヤ.今回一番ネックだと思ってた福助は凄く真面目に演じてて予想より良かった.勘九郎忠臣蔵九段目でお石やった時には「やるじゃん」って思ったから期待してたのに、今回の源蔵は良くなかった.

  • 口上

ちょこんと座って小首をかしげる雀右衛門さんのシルエットがお人形のように可愛らしくて、どうかすると口上そっちのけで見つめてしまった.仁左さん、さすが関西人です.しっかり来月松竹座の宣伝をされてました.時間さえあれば夜の部勧進帳もみたかった.

  • 春興鏡獅子

弥生姿の海老蔵の美貌に唖然.こりゃ美しいわ.思わず写真を買ってしまったくらい綺麗だった.海老蔵(ああ、まだつい新ちゃんを言ってしまう)の娘姿って貴重だもん.ただ顔は玉さんとはるくらい、というかそれ以上に綺麗なんだけど、どうしても男性が女装してる風に見えてしまうのは何故だろう.首が太いのが目立つのと、どこにも儚さを感じられない強さがあるからかしら.弥生ちゃんの場面は可憐な菊ちゃんのほうがしっくりきた.獅子になってからは気迫たっぷりで圧倒された.相変わらずこのまま飛んでいくんじゃないかと心配になるほどの勢いでぐるんぐるんと回してた.派手な演目で終わるのもいいねー.胡蝶は隼人君と児太郎君.胡蝶に関しては勘九郎の鏡獅子での研祐君が物凄かったからどうしても比較をしてしまう.逆に考えたらあそこまで踊れちゃう子供ってのが異質だってことなのかもね.隼人君も児太郎君もお父さんにそーっくり.特に隼人君は小学生ながら既に大人の二枚目顔をしてるから胡蝶の扮装が微妙に似合わない.早く成長して二枚目姿を見せて欲しい.期待してるよ!


【夜の部】

一、傾城反魂香 将監閑居の場
 又平:吉右衛門
 土佐将監:段四郎
 狩野雅楽之助:歌昇
 土佐修理之助:友右衛門
 おとく:雀右衛門

二、義経千本桜 吉野山
 佐藤忠信 実は源九郎狐:菊五郎
 静御前菊之助
 逸見藤太:権十郎

三、 助六由縁江戸桜
 花川戸助六海老蔵
 三浦屋揚巻:玉三郎
 白酒売新兵衛:勘九郎
 朝顔仙平:歌昇
 三浦屋白玉:福助
 福山のかつぎ:松緑
 口上:段四郎團十郎代)
 髭の意休:左團次
 曽我満江:田之助
 くわんぺら門兵衛:吉右衛門

三等とはいえい列センターが取れたので花道も半分くらい見えた.ラッキー.

  • 傾城反魂香

いわゆる吃又です.あんまり好きな演目じゃないから集中力が持たない.最後の最後は夫婦の喜び方が可愛くて楽しめるんだけど、そこまでいきつくまでに飽きてしまう.吉右衛門さんはこの演目が相当好きなのかしら.しょっちゅうやってる気がする.どもりがひどくて上手く喋れない又平の描写が残酷なほどリアルで、これ多分テレビ放送は無理だと思う.先月休演して心配してた雀右衛門さんのおとくが素晴らしく良かった.又平のことが好きで好きで心配でしょうがないんだなあって気持ちがびしびし伝わってきた.この役は雀右衛門さんの持つほんわかとしてお嬢さんっぽさによく合ってる.

菊ちゃんの出は本当に可愛らしくて綺麗でうっとり眺めていたんだけど、その後は夢の世界へ….藤太の出番なんてさらさら覚えちゃいねえ.ダメじゃん.

楽しかった――.助六ってこんな楽しい芝居だったのね.これまでは助六の出までぼーって見てしまってたけど、今回は最初から最後まで楽しかった.並び傾城は萬次郎さん、亀寿くん、松也くん、あと一人がわからなかった.松也君は最近いつ見ても可愛い.丸い頬が女形にぴったりで先が楽しみ.玉さんの揚巻は圧巻.玉さんが花魁やる時はいつも衣装が楽しみで楽しみで.今回も期待にたがわず素晴らしい衣装を披露してくれました.道中は金色のモール(?)がびらびらとぶらさがって真ん中にでっかい鯉、背中に伊勢海老がついた内掛けに、短冊や笹がいっぱいついた帯はと豪華絢爛.客席中のため息をさらってました.二度目の登場の時の内掛けは手描きの墨絵がいっぱいに描かれた白い内掛けでこれまた豪華.玉さんは背もあるからこういう大柄な模様が映える.いかにも女王様な雰囲気のある玉さんだから、意休への啖呵が決まりまくってかっこいい!
待ちに待った海老蔵助六の登場です.しまった、助六って花道でこんなに長くポーズつけまくったっけ?ひたすらいろんな型を見せてるだけだというのになんでこんなに楽しいの.もうねえ、どんなポーズをとっても役者絵から切り取ったように美しい.この助六だったらそりゃ廓中の女性が夢中になるのも頷ける.若さと色気とやんちゃなところが交じり合った大変魅力的な助六だった.で、どんなに無茶なことやっても決して泥臭くならない粋な江戸っ子助六でもあった.何より助六と揚巻とが並ぶとまさに錦絵の世界.お二人とも綺麗過ぎです!
白酒売は勘九郎さん.コミカルに演じてたけどやっぱりちょっと狙いすぎか.思い返してみると実は時蔵さんの白酒売が一番おもしろかったような気がする.時蔵さんが天然でおかしいのに比べると勘九郎さんはギャグにしようという意識が見えすぎてかえって笑えない.ただお客さんは大喜びだったので襲名のご馳走としては良かったと思う.
門兵衛は吉右衛門さん.こちらもご馳走としては十分.情けない役を情けなーく演じてられました.やっぱり三津五郎襲名の時の仁左さんの門兵衛はいくらご馳走とはいえナシだよなあって改めて思った.助六よりかっこいい門兵衛じゃ助六の立つ瀬がないもん.南座という土地柄もあってか、あの時だけは観客の多くが助六じゃなくて門兵衛にうっとりしてたよ.
素晴らしい助六だっただけに団十郎さんの姿がないのが残念だった.早く元気な姿で舞台に戻ってきて欲しい.