十八代目勘三郎襲名披露 四月大歌舞伎


楽しかったー.最近ちょい惰性になりかけてた歌舞伎観劇だけれども、今日は久しぶりにワクワクした.
歌舞伎座久しぶりの團十郎さんに、玉さん仁左さん揃い踏み、あー、楽しかった.勘三郎襲名だというのに私のお目当ては中村屋さん一門ではないので、あんまり勘三郎にはふれられないかも.

襲名値段には「足元みやがって」と松竹に対する恨みの一つも言いたくなるけれど、さすが襲名というだけの配役をしてきてくれてることには感謝したい.豪華だ豪華だ.


先月もそうだったけれど、勘三郎が出演する演目の際にはいつもの森田座の定式幕ではなく中村座の定式幕が使われていた.こだわってんなあ.


一、 歌舞伎十八番の内 毛抜

  粂寺弾正…………團十郎
  勅使桜町中将……海老蔵
  民部弟秀太郎……勘太郎
  玄蕃一子数馬……玉太郎
  錦の前……………亀寿
  小原万兵衛………市蔵
  腰元若菜…………右之助
  小原春風…………高麗蔵
  秦民部……………権十郎
  八剣玄蕃…………團蔵
  小野春道…………友右衛門
  腰元巻絹…………時蔵

團十郎さん、10ヶ月ぶりの歌舞伎座舞台ですって.言われてみれば長らく團十郎さんを見ていなかった.
粂寺弾正はやっぱり團十郎さんがいい.若衆や腰元に手を出そうとするセクハラ親父なのがちっとも嫌味じゃない.あの大らかな感じというのは團十郎さんならではだよなあ.踊る毛抜きと小柄を前にひじを突いてウンウン考えてる様子とか、可愛らしいったらない.団蔵さんとの息もぴったりでラストの種明かしは大変見ごたえがありました.荒事ならではの爽快な後味もいいね.1幕目から楽しませてもらいました.團十郎さんはホッとさせてくれる役者です.
手を出される若衆に勘太郎ちゃん.よかった、勘太郎ちゃんで.万が一海老蔵がやったてたらきっと爆笑してた.勘太郎ちゃんはだんだん綺麗になってきたね.海老蔵は相変わらず白塗りが異常に綺麗でした.そしてお公家喋りが相変わらずヘンテコでした.
時蔵さんのこういうちょっと高飛車でツンとした役が似合うね〜.


二、 十八代目中村勘三郎襲名披露 口上


新之助、じゃなかった海老蔵が「素晴らしい」を連発してて受けてた.私の後ろのおば様なんて「うそ臭い〜」と笑ってらっしゃいましたよ.とはいえこの方は口上終わった後「海老蔵が綺麗」「海老蔵が光り輝いてた」と仁左さんから海老蔵に心変わりをしたような感想を連発されてたので、これで1人海老蔵ファンが増えたわけですね.
玉三郎さんは先月に引き続き今月も笑いを誘う挨拶をされてました.先月の楽日に「終わっちゃって寂しいわ」って新勘三郎さんにいったら「だけど兄さん、4日後には4月興行の初日ですよ」と返されたそうだ.あらためて歌舞伎役者は脅威のスケジュールで働いてますねえ.


三、 籠釣瓶花街酔醒

  佐野次郎左衛門……勘九郎改め勘三郎
  八ツ橋………………玉三郎
  九重…………………魁春
  七越…………………勘太郎
  初菊…………………七之助
  絹商人丈助…………市蔵
  絹商人丹兵衛………家橘
  釣鐘権八……………芦燕
  下男治六……………段四郎
  立花屋女房おきつ…秀太郎
  繁山栄之丞…………仁左衛門
  立花屋長兵衛………富十郎

玉さん八ツ橋の花魁道中が見たいがために花道近くを取ったくらい楽しみにしてた演目です.
だというのに全然配役チェックしてなくて、幕前に始めて栄之丞を仁左さんがやることを知った.まじっすか.
すごい!私にとっては最高の配役です.先月といい今月といい玉さんも仁左さんも本気で勘三郎襲名にお付き合いしてるよね.先月の夫婦役といい、今月の栄之丞といい襲名公演でもなきゃ絶対に仁左さんでなんて見られないと思うもん.嬉しいなあ、玉さんの八ツ橋に仁左さんの栄之丞.これで一気に期待度が倍増しました.


やー、期待通りでした.この2人の場面ではうっとりするしかありません.2人ともハレの気分を客にもたらす役者だと思う.そして私はそういう役者が好きだ.「美しいものを見た!」と素直に思えるって凄いことじゃないですか.
玉さんは八ツ橋の衣装がまた変わってた.今回帯はピンク色で内掛けがオレンジの縞模様だった.個人的には前の全身ピンクの方が好き.でも次郎左衛門が一気に落ちるのも納得の美しさだった.あそこで美しくあることが話に俄然説得力をもたせるからね.花道でこっちに歩いてくる玉さんには思わず手を前に組みそうなくらいうっとり見とれてしまいました.なんかもう違う生物みたい.
仁左さんもね、粋な着物がまた似合うんだな〜.すらっとしててあの八ツ橋が入れ込むのも頷ける男ぶりです.


勘三郎さんの次郎左衛門は当たり役になるんですかね.幸四郎吉右衛門で見たことがあるけれど、勘三郎が一番この役にはまってた.勘三郎はキリッとした二枚目よりもこういう役のほうが似合うなー.ただ私のお隣さんは次郎左衛門が八ツ橋にこっぴどく愛想尽かしされてる場面で笑ってた.くそう、勘三郎の芝居はこれがあるから避けてしまうんだよ.あそこでどうやったら笑えるっていうんだろう.勘三郎だって絶対に笑う方向の芝居してなかったのに.凄くいい表情で花魁のセリフを聞いてたのに.


おきつの秀太郎さんも嬉しかった配役の一つ.秀太郎さんは玉さんや菊ちゃん、時蔵さんなんかとは違った意味で大好きな女形です.
なんというか……異色だよね?あの独特の声も好き.秀太郎さんがメインってのだとちょと違うって思うんだけど、脇で登場してくれるとラッキーと嬉しくなっちゃう、そんな役者です.
あと段四郎さんの治六が良かった.これもご馳走配役だよね.