カリギュラ@シアターコクーン

作:アルベール・カミュ 演出: 蜷川幸雄
小栗旬 勝地涼 長谷川博己 横田栄司 月川悠貴 廣田高志 新川將人 冨岡弘 塾一久 青山達三 磯部勉 若村麻由美

原作を読んだのは確か中学か高校の頃.なのですっかり話など忘れておりました.誰がどうというよりも、戯曲の面白さ、台詞の面白さに惹きこまれた3時間だった.特にカリギュラ、シピオン、ケレア、3人の緊張感を伴う関係性にはワクワクし通しです.次にどんな言葉が飛び出てくるのか、ひとつ間違えると全てが台無しになりそうな緊迫感にこっちも身構えてしまった.ただ、カミュってこんなに暑苦しいイメージだったかなと見ていて疑問に思えてきて、もう一度原作読もうと決心した.
舞台で見た初めての小栗君は藤原ハムレットのフォーティんブラスだった.あの時はどうにもこうにもへたくそだったけど、あれから数をこなすうちに随分と成長したなあと感慨深くなった.カリギュラでも体をはって熱演してたけれど、ガツンとやられるとこまではいかなかった.ところどころカリギュラの揺らぎを台詞でよく表現してるなって感心したけど、まだなんていうか「頑張ってるなー」って思わせてしまうとこがあった.頑張ってるなーって思わせないとこまで行ってほしい.
勝地君のシピオンは素晴らしかった.とてもこの間新感線舞台でバカやってた子とは思えませんね.カリギュラが彼にだけはつい本音をもらさずをえない純粋さと透明感と素直さと、それが故の傲慢さみたいなものが全身から漂っていた.キッチンの時は全然目立たない子だったのにこんな役者になるとはねえ.
ケレアの長谷川博己も良かった.カリギュラと対峙できる硬質さと、それでも彼を越えきれない小ささみたいなものが伝わってきた.紅一点な若村麻由美はさすがの存在感.蜷川芝居にお馴染みの横田さんも良かった.
難解で地味な作品を派手な役者でやるのがいかにも蜷川さんらしい.なかなかこの戯曲でこれだけの人を集められませんよ.